独鈷山(とっこさん/峯小屋城址)
 〜塩田平の背景の岩峰〜標高1,266m〜
 塩田平の別所近辺には、子檀嶺岳(こまゆみだけ)、夫神岳、女神岳、大明神岳など、小粒だが気になる山々がいくつか居並んでいるが、それらの中の代表的存在。
 鋸歯のごとき岩尾根を連ね、屏風のごとく堂々と聳える姿は、戸隠表山を彷彿させるが、実際に登ってみても、鎖場の連続する急峻な登りは、戸隠山同様に豪快である。そんな山だけに、頂上からの展望もきわめてよい。
 しかも、そんな守るに易く、攻めるに難い地形的条件や、眺望の良さが買われたのか、中世にはここに山城が設けられていたという。宮坂武男氏著『図解 山城探訪 第3集 改訂上田小県資料編』(長野日報社刊)に「峯小屋城」として掲載されているもので、厳密には頂上のすぐ手前(西側)の平場がそれらしいという。ただ同書によれば、そこの様子からみて「逃げ込み城に属するもので、城と言ってよいか迷うもの」とのこと。(注:新人物往来社刊『日本城郭大系 8 長野・山梨』には「独鈷山山頂西方に築かれている」とあるのみ。なお長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』にはなぜか城名すら掲載されておらず、郷土出版社刊『探訪 信州の古城』には城名は掲載されているものの、所在地名以外の関連記事は全くない。) 確かに、現地には特段目立った山城址の遺構めいたものは見受けられなかったが、しかし中信エリアに掲載した「日岐大城址」などの例に見るごとく、こういう険しい山では地形自体が防禦の役割を果たすため、たとえ遺構がなくても決して城として不自然ではないように思う。
 登山コースはいくつかあるが、そこそこにスリルも味わえる中禅寺からのコースがおすすめ。中禅寺から頂上まで約2時間半、登頂時の充実度満点。

 ← 独鈷山の一角の岩峰(中禅寺より)

【緯度】361912 【経度】1381114