仙元山(せんげんやま)
 〜超低山だが歴史性豊かなエリア〜標高98m〜
 埼玉県深谷市にある優しい里山。一帯は「仙元山公園」として散策路等が整備されており、また頂上には「富士浅間(せんげん)神社」(関東地方に多い富士山信仰に基づく「浅間神社」の分祀のうちの一つ)などが祀られていて、昔も今も近隣の人々にとって格好の憩いの場になっているようだ。ちなみに筆者が訪れたのは真冬の1月上旬であったが、頂上の神社への参拝者や、健康増進のためのウォーキングをしている者など、山中を行き交う人の数は結構多かった。
 ところで「仙元山」とは筆者のように他地域在住の者にとっては、一見変わった名前のように感じられるが、「仙元」とは「せんげん」、すなわち「富士浅間神社」の「浅間」に他ならず、この地域における富士山信仰にあっては、ごく普通の表記のようである。(注:現に、同じ埼玉県内の小川町にも同名の山がある他、同町内の「富士山」頂上にも「冨士仙元大菩薩」の石碑があるなど、この地方の富士山信仰の深さを知ることができる。なお柏書房刊『日本の神様読み解き事典』(川口謙二編著)によれば、富士講においては富士の神「仙元大日」を創造神として祀るとある。)
 この山に訪れるには、関越自動車道「本庄児玉IC」から、まずは東に適当に走り、国道17号線に突き当たったら右折、さらに深谷市役所あたりを目指す。深谷市役所を左に見送り、「城址公園入口」交差点で右折、県道69号線に入って直進し、「ビッグタートル前」交差点を右折すれば、「深谷ビッグタートル」や陸上競技場等がある一角に突き当たるので、後は右へ走れば「仙元山公園」前に出る。公園内に通じる車道を少したどれば駐車場所があるので、そこに車を駐め、林間のよく整備された道を上がっていけば、10分ほどで難なく神社のある頂上に出られる。
 そこには上述の「富士浅間神社」の他、同社殿の正面に向かって左側には「二柱神社」も併せ祀られている。現地案内看板等によれば、前者は木花開耶姫命ほかを祭神とし、創立年代は不詳だが、中世に深谷城主であった上杉が勧請したもので、安産の神様として知られているとのこと。また後者は明治40年にこの近辺に祀られていた同名のいくつかの小社を合祀・遷座したもので、伊弉諾尊(=伊邪那岐命・いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(=伊邪那美命・いざなみのみこと)の二柱を祭神とし(それが名の由来)、「聖天様」の名で親しまれており、夫婦和睦・縁結びの神様とのことである。さらに境内にある延文二年(13571年)銘のある宝篋印塔の塔身は深谷市の文化財に指定されているなど、「山」としてはいささか楽に過ぎるとはいえ、歴史性豊かな興味深いエリアといえよう。

 ← 富士浅間神社(深谷市の仙元山頂上にて)

【緯度】361038 【経度】1391608