城の山(じょうのやま/和合城址)
〜頂上は展望良好の要害の地〜標高655m〜
国道18号線を長野市側から上田市方面に向けて南下してゆくと、坂城町と上田市との境のあたりで、千曲川を挟んで両岸から急峻な崖が迫っている地点を通過する。この、あたかも昔はつながっていたかのように見える崖を「岩鼻」と総称しているが、千曲川の左岸側と右岸側を区別するため、地元では便宜上左岸側を「半過岩鼻」(別掲)、右岸側を「下塩尻岩鼻」と、所在する地名を頭に冠し呼称している。
これらの「岩鼻」、それぞれ強烈な個性を有しているが、「半過」の方は頂上が「千曲公園」になっていることや文字通り鼻のような山容であることから比較的有名なのに対し、「下塩尻」の方は通常虚空蔵山から西に延びる山稜の末端の崖としかみなされていない。が… 実はその頂上は「和合城」という戦国時代の山城の址で、しかも最近主要な郭周辺の草木がきれいに刈り払われ、かなり顕著な土塁や堀切が明瞭に姿を見せたため、歴史探訪の地としてはもちろん、頂上からの展望も頗る良いことから軽登山としても十分楽しめる、いわば一石二鳥の地といえる。
登山口は通称通り坂城町下塩尻にあり、「坂城町指定史跡 和合城跡登山口」と記した標柱があるので迷うことはなかろう。道はやや急ながら、送電線鉄塔の巡視路を兼ねているせいか良く整備されており、ほんの30分ほどの登りで虚空蔵山からの稜線上に達する。城址にはそれより右へ、結構深い堀切を突っ切って進むと、そのすぐ先に、草木がきれいに刈り払われた明るい郭が姿を現し、坂城町で設置した城址の説明板がある。頂上にあたる一の郭は一部石垣の遺構も残る顕著な土塁の上で、ここはかつて狼煙台的に利用されたというが、それだけに眼下の坂城町や千曲川、またその背景をなす五里ケ峰など周囲の展望は素晴らしく、まさに千曲川の狭窄部の要害として、うってつけの地であったことが実感されよう。
(筆者注:なお、本項は当初「下塩尻岩鼻」の名で紹介していたが、その後地元坂城町発行の『さかきふるさと100選』等を参照したところ、地元では「城の山」と呼称されている峰であることが判明したため、表題をそれに合わせて修正した。ちなみに『長野縣町村誌 東信篇』の「下塩尻村」の項には「岩端山」とあり、また長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』の「和合城」の項の備考欄には「呼称―城山」とある。)
← 城の山(下塩尻岩鼻)の岩壁(千曲川左岸側の城山寄り山腹より望む)