美ヶ原(うつくしがはら/王ケ頭・茶臼山・牛伏山・物見石山・武石峰)
〜「世界の天井が抜けた」ような地〜
標高2,034m(王ケ頭)・2,006m(茶臼山)・1,990m(牛伏山)・1,985m(物見石山)・1,973m(武石峰)〜
美ヶ原の景観の妙は、かの有名な尾崎喜八氏の名文「登りついて不意にひらけた眼前の風景に しばらくは世界の天井が抜けたかと思う」に尽きると思う。実際、自動車道路が台上まで駆け上がっている今日でさえ、ドライブ中の我々がその特異な光景を目にした瞬間は、多かれ少なかれ同様の感慨にしばしとらわれてしまうだろう。まして尾崎氏が各地の山々を跋渉されておられた頃は、現在のように自動車など発達していなかった頃だから、さぞかしその感激はひとしおだったはず。
さて、現在の美ヶ原は、周知のとおり、既に「美ヶ原美術館」に代表される観光開発の手が伸び、ハードな「山登り」には見向きもされない場合もままあるようだが、なかなかどうして、スポットを選択すれば、まだまだ良い雰囲気の箇所は結構ある。
それでも、まあ、まずは最高点の「王ケ頭」に挨拶しよう。「山本小屋」付近の駐車場に車を駐め、無線鉄塔の林立する頂上を目指す。よく観光絵葉書の被写体になる「美しの塔」経由30〜40分程度で頂上。
王ケ頭に登頂したら、元来た道を引き返し、今度は美しの塔まで戻らないへんの分岐を右へ、「茶臼山」に訪れてみよう。こちらは先刻の王ケ頭とはうって変わって静寂な雰囲気。分岐からの往復は1時間程度も見ておけばよかろう。
これで駐車場所に引き返しても、まだまだ時間は十分あるはずだ。行きがけの駄賃に、すぐ目と鼻の先の「牛伏山」に挨拶したら、折角だから、今度は「物見石山」に立ち寄ろう。美ヶ原美術館より少し上田寄りに下りたへんに登山口がある。付近に駐車し、歩き出す。しばらくして後ろを振り返ると、例の美ヶ原美術館のあたりの童話的な工作物が目につくが、それでも途中、ちょっと窪地状になった草原で、周囲の展望が遮られるスポットがあり、ここなどは往時の美ヶ原を偲びつつ休憩するには好適な場所だろう。こちらも駐車場所からの往復は1時間弱も見ておけばよい。
なお、美ヶ原美術館をいささか悪者めいた書き方をしてしまったが、同館の名誉のために一言付言すれば、この美術館、収蔵作品等は素晴らしいものがあり、ことに筆者は東山魁夷の連作が好みで、たまに見たくなる。時間に余裕があれば、一見の価値はあると思う。
以上、上田市側から車を走らせた場合、訪れてみたい主な山をあげてみた。この日はまあこの程度で下ることになろうが、後日機会があったら、今度は松本市側から「武石峰」に是非訪れてみよう。こちらも車道はかなり上まで駆け上がっており、同峰の直下に駐車し登れば、ほんの10〜20分ほどで登頂可。広く、展望良好な頂上だが、間近に望まれる王ケ頭の無線鉄塔群が痛々しい。
← 美ヶ原(茶臼山より)
(緯度・経度は王ケ頭に合わせてあります。茶臼山はその南東、物見石山は東に位置しています。)