太郎山(たろうやま)・虚空蔵山(こくぞうさん/虚空蔵山城址)・
鳥小屋山(とりごややま)・高津屋山(たかつややま/高津屋城址)・
陣場鳥越山(じんばとりごえやま)
〜「上田市民の山」から西に連なる展望と歴史の峰々〜
〜標高1,164m(太郎山)・1,077m(虚空蔵山)・958m(鳥小屋山)・960m(高津屋山)・924m(陣場鳥越山)〜
「上田市民の山」こと太郎山。標高的には、すぐ東の東太郎山より若干劣るが、総合的な意味での「山」としての雰囲気では、やはり若干東太郎山をしのぐものがあるように思う。明るくひらけた展望の良い頂上、頂上の一角に一体のみ立つ素朴なお地蔵様の表情、頂上直下の太郎山神社のこれまた素朴なたたずまい、等々… 特に神社の醸し出す雰囲気は、地元の人の信仰の強さを無言のうちに物語っており興味深い。
この山へのルートは、上田市側からも坂城町側からもあるが、最もオーソドックスな上田市山口からの道からは、やや急登ながら登山口から頂上まで約1時間半程度。
通常ならここで元来た道を引き返すことになろうが、時間や交通の条件が許すなら、ぜひ、西への尾根をたどり、虚空蔵山方面にも訪れてみてほしい。この山、標高的には太郎山より100メートルほど低いが、円頂で広い太郎山頂上に比し、こちらは結構迫力ある岩峰で、頂上も狭く、アルペン的な気分を味わうことができる。また、そのような地理的条件であるだけに、戦国時代には当然のごとく城郭(虚空蔵山城)が設けられていたという。太郎山頂上から約2時間で達するが、かつて筆者がそちらから訪れた際には、道の両脇から生い茂るイバラに難儀したものである。今はどうだろうか? 一応、皮手袋の用意はしておいた方がいいかも…
ただ、虚空蔵山のみを単独に目指すなら、最近地元の方の献身的なボランティアの結果、坂城町側からは大変良い道が開設されたのが嬉しいところ。こちらからなら今や全くイバラの薮漕ぎの心配はないし、また標識やロープも整備され、きわめて安心して歩ける素晴らしいコースとなったので、是非多くの方に訪れてみてほしい。その場合のアプローチは、坂城町の老人ホーム「美山園」前を通過して太郎山方面に向かう林道に入り、途中のY字路で「菖蒲(勝負)平林道」に右折してしばらく進むと、虚空蔵山から西に延びる稜線の直下に突き当たったあたりに登山口がある。そこから徒歩で、まずは明るい岩峰上で展望の良い「陣場鳥越山」に登りつめ、さらに「高津屋山」「鳥小屋山」を通過し(注:新人物往来社刊『日本城郭大系 8 長野・山梨』等によれば、この高津屋山を中心とした一帯も、虚空蔵山と同様、中世の山城址(高津屋城址)で、前述の虚空蔵山城の支城であったという。見出しでは便宜上、城名と同じ「高津屋山」の後のみに城名を付したが、実際には「鳥小屋城」の別称があることからもわかる通り、陣場鳥越山から鳥小屋山にかけての広い範囲が城域に含まれていたもののようである)、さらに「のぞき」の鞍部を経由して、約1時間半で明るくアルペン的で展望の良い虚空蔵山頂上に達する。頂上からは西に連なる北アルプス連峰はじめ、周辺のおもだった山を指呼できるほか、付近では珍しい「なんじゃもんじゃの木」(注:フジキ又はヤマエンジュというマメ科の植物で、東北信地域では虚空蔵山頂上付近にしか見られない貴重なものであることから、上田市指定天然記念物となっている)が見られるなど、きわめて興味深く、かつ充実度の高い山域であり、この点、山としての雰囲気的には先の太郎山に勝るとも劣らないだろう。
← 素朴なお地蔵様(太郎山頂上にて)
(緯度・経度は太郎山に合わせてあります。虚空蔵山、鳥小屋山、高津屋山、陣場鳥越山はその西にあります。)