摺鉢山(すりばちやま/伊勢崎城址)・三ツ頭山(みつがしらやま)
〜山城址など、一見平凡ながら気になる山々〜標高881m(摺鉢山)・922m(三ツ頭山)〜
上田市の北、上室賀集落あたりに点在する山々。標高的には平凡ながら、山容からきているらしい山名がどこか興味をそそる、ちょっと気になる山々。特に摺鉢山は、頂上付近には顕著な堀切の址があり、一目で山城址であると判る。実際、ここは「伊勢崎城」という名の山城の址だったという。もっとも同城の詳細については、残念ながら本文記述時点で私の手元にある文献からは不明だが、南原公平氏著『信州の城と古戦場』(令文社刊)によれば、この城、別名を「竹把城」といったとのこと。なお、この上田平近辺には別掲の虚空蔵山など「伊勢崎城」という名の城址が多い(有名な上田城も別名を「伊勢崎城」といったとか!)。伊勢崎という語がこの地方で一般的に何を意味したか… 今後じっくり調べてみたいところ。
さて、これらの山々に登るには、上田市街地から国道143号を青木村方面に向かい「小泉」の交差点を右に折れ、「室賀温泉ささらの湯」のすぐ先の「室賀つつじ平マレットゴルフ場」への林道に入る。マレットゴルフ場に突き当たった所で道は二分するが、ここは左へ進み、やがて道が大きく右にカーブする地点で、左に山林作業車なら十分入れそうなくらい広い道が分れている地点に出ると、そこが両山の登り口。
ここを基点に、どちらから登ってもよいが、筆者の場合はまず前述の左に分れる道に入り、摺鉢山を先に訪れた。この道、当初は案外良いが、地形図上841mピークを乗り越えた先の850mピークとの鞍部あたりで葛の密生に前途を阻まれ、その突破に少々苦労する。その先はまた落ち着き、地形図上850mピークを乗り越え、最後の急傾斜にかかると踏み跡不分明となるが、後はもうただ高い方を目指して登れば、自然に三角点のある頂上に達する。標識もなく、樹林に囲まれ展望ゼロながら、すぐ北の直下に、前述の通り一目でそれと判る顕著な堀切がみられる。
しばし付近を観察したら、一旦往路を駐車場所に戻り、次いで逆方向に登り返して三ツ頭山へ向かう。駐車場所付近は林道の法面が崖状になっているので、林道をやや左に歩き、登り易そうな所を適当に選んで尾根上に這い上がり、後は適当に細い踏み跡を拾いつつ、南東方向に登りつめて頂上へ。もっとも、こちらは先刻の摺鉢山にもまして地味で静寂、結構広い山林作業道(防火帯?)が通じていた他には、これといった特徴もなく、三角点も標識もなく、無論周囲は樹林に囲まれ展望もないという印象薄い頂上。ちなみに前記の『信州の城と古戦場』によれば、ここもまた「跡部城」という城の址で、近くの室賀城の出城かとあるが、先の摺鉢山と違い、こちらは顕著な山城の遺構らしきものも見当たらない。(注:長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』によれば、跡部城址の遺構範囲は三ツ頭山頂上から南に派生する尾根の中腹に記されているので、どうも頂上自体が城址だったわけではないようである。この点、先の摺鉢山や別掲の小泉城址の城山などとは状況が違うので、本項では三ツ頭山の方はあえて城址扱いとしなかった次第。) 草叢も深く、今やほとんど人が訪れない山である様子をはっきり示していた。
なお、以上両峰を往復しても、里山だけに所要時間は登り口からほんの3時間程度もみておけば十分。
(追記:その後、2006年になって、地元ボランティアの手で、これらの山々にも、しっかりした道と標識が設置されたという情報が舞い込んできた。別項の虚空蔵山への道が整備されたという報と併せて、大変嬉しい限りである。筆者としても折を見て再踏査し、所要の改稿を加えたい。)
← 摺鉢山を望む(東の林道上より)
(緯度・経度は摺鉢山に合わせてあります。三ツ頭山はその南東に位置しています。)