羽黒山(はぐろやま)
〜「佐久市飛地」内にある近隣住民の憩いの山〜標高820m〜
南佐久郡佐久穂町の地形図中、小海線羽黒下駅あたりを見ていると「佐久市飛地」の表示があるのに気がつく。ここで紹介する「羽黒山」は、その「佐久市(旧臼田町)飛地」の中にある。
この「羽黒山」、例によって国土地理院の地形図上には山名の記載がないものだが、小海線の羽黒下駅に立ち寄ると、駅前の観光案内看板に「羽黒山」の表示があるのを見出すことができる。実は筆者はこれにより同山の存在を認知した次第。「羽黒山」というからには、東北の出羽三山の羽黒山と何らかの関わりがありそうだが、頂上にある石祠があるいはそれを祀ったものであろうか? 本文記述時点では残念ながら確認が取れていないが、ただ、少なくともここに「羽黒山」があることにより、その山の北麓の街が「羽黒下」であることだけはストレートに納得できる。
この山に訪れるのは存外楽で、佐久市から国道141号線を南下し、佐久穂町に入ってほどなく千曲川を「栄橋」で対岸の右岸側に渡り、突き当りを右折して少し進んだところで再び左折、小海線の踏切を乗り越し、後は羽黒山の南麓を走る車道をつかまえ、さらに途中で左に分かれて上がる車道を行けば、ほとんど頂上まで車で上がれてしまう。そこは運動公園になっていて、実際「山」というよりはグラウンドという感じだが、それでも運動公園入口から、グラウンドの中をほぼ向こう側に突っ切った片隅には、松の木の根方に前述の石祠が祀られている一角があり、一応古くからの地元の人々のこの山への愛着めいたものを感じとることができる。また、グラウンドの真中からは茂来山方面の展望が意外と良い。
なお、宮坂武男氏著『縄張図・断面図・鳥瞰図で見る 信濃の山城と館 第1巻 佐久編』(戎光祥出版刊)によれば、伝承や記録は残っていないが、この山は中世の狼煙台の址でもあった可能性があるという。特に防備を施した痕跡も見当たらないが、狼煙台ではあり得ることなのだそうで、この山の西側の神社がある台地と、頂上(グラウンド付近)がその候補地として考えられるとのこと。(注:その上で、宮坂氏は前者を候補地としてあげ、問題提起とされている。)
← 羽黒山を望む(千曲川に架かる「栄橋」前より)
(「栄橋」のすぐ東、佐久市飛地の中の809.9m三角点の北約150mの地点が頂上です。)