オコウ山(おこうやま)
 〜変わった山名が興味を惹くが登山道なし〜標高1,379m〜
 旧真田町(現:上田市)傍陽(そえひ)にある寂峰。三角点もないマイナーな山ながら、そのあまりに変わった山名が興味を惹く。一見人名のようでもあるし、また「お香」を連想させるようでもあって… 元はどんな字が当てられていたのか、以前は大いに興味を惹かれたものであるが、その後『長野縣町村誌 東信篇』の「傍陽村」の項などを参照したら「雄鴻岳」とあった。もっとも現在の地形図上は片仮名となっているので、混乱を避けるため、本項の表題は地形図の標記に従い「オコウ山」で紹介しておきたい。
 さて、この山、前述の通り三角点もなく、また明瞭な登山道も見当たらない。そのため登るには、自身の判断によりルートを決め、ある程度の薮漕ぎも辞さぬ覚悟で訪れる必要があるが、それでも薮は事前に想像されるほどには深くないので、ルート設定さえうまくできれば案外難しくはない。ここでは筆者の場合の登行状況を参考までに記す。長野市・旧真田町境の「新地蔵峠」から4kmほど南に下った「松井新田」の集落あたりで、山の神の祠の脇から北に分かれる林道に進入。しばらく進むと、そのうち旧地蔵峠方面に延びる「一の沢林道」の入口ゲートに突き当たるが、その手前から右に別の林道が分れているので、これに乗り入れる。(注:この林道はやや細く両側から薮が迫っているので、車に傷つけたくない向きには、ゲート付近に駐車して以後は歩いた方がよい。)さらに600〜700mほど走ると作業小屋らしきものが右手に現れるが、そのすぐ先で右手に上がっている山林作業道があるので、ここから登行開始。作業道は多少薮がちだが、歩行には支障がないので、しばらくはこれを忠実にたどる。が、それも長くは続かず、やがて丈の低い落葉松の植林地に出ると、作業道の道形は薄の枯穂の下に消失するので、以後は道もない落葉松林の中、熊笹の茂る急斜面を登行するしかない。ここではルートの採り方は2つ考えられ、一つは右手に見える1,170m標高点のあるピークとの鞍部に登りつめ、そこから左に頂上まで稜線伝いに登るルート。もう一つは、そのまま直進して浅い谷筋に沿って直登し、頂上から西に派生する稜線上に登りつめて、後はその稜線伝いに頂上まで登るルート。筆者の場合は後者を登り、前者を下りのルートに採った。後者の場合、さらに上部に植林当時の作業道の道形とおぼしきものも見受けられたが、最早それはあえて無視して進んで支障ない程度に荒廃しつつある。一般にはむしろ前者を採った方が若干登りやすいかも知れない。いずれにせよ、道らしい道はないが、前述の通り、ここの熊笹は比較的丈が低いので、少なくとも春先あたりまでなら案外進行に苦労しなくて済むのが幸い。また、前者後者いずれを採っても、稜線上に出てしまえば大分薮も薄れて一気に歩きやすくなり、後はそのまま稜線伝いに最も高い地点まで登りつめると頂上に達する。頂上は明るい笹原で、樹間に美ヶ原方面などが見渡せるが、ほとんど訪れる人はないとみえ、筆者の訪問時点では標識はおろか目印テープすら目につかなかったのが意外。以上、林道の登り口から頂上まで、筆者の場合は約1時間半の時間を要した。
 なお、筆者と同様に後者のルートから登り、前者のルートを下ろうとする場合、下りは頂上から西に派生する稜線を200〜300mほどたどった所で、さらに南に派生する枝尾根がルートなので、頂上から直接南に派生する稜線に入り込まないよう注意が必要。また、たまに踏跡らしきものが出ると、すぐカモシカの溜め糞に出会ったりする野生動物の天下ゆえ、行動中は熊鈴を鳴らしていくなどの対策をとっていく方が無難だろう。

 ← オコウ山方面を望む(南西側山腹の山林作業道より)

【緯度】362952 【経度】1381537
(明瞭な道はありませんので、後はルートの選択次第です。)