虫倉山(むしくらやま)
 〜登り口は石器時代の黒曜石採掘の遺跡〜標高1,659m〜
 長和町にある有名な「星糞峠黒曜石原産地遺跡」(注:縄文時代に石器の原料として広く普及した黒曜石の採掘遺跡)の東にある、知られざる山。筆者はこの山の名を「星糞峠」の直下にある施設「黒曜石体験ミュージアム」にある周辺の案内地図の中に初めて見出した際、中条村にある信州百名山の1峰の他にも同じ「虫倉山」という名の山があったのかと意外な感じにうたれた。
 この山に登るには、まずは「黒曜石体験ミュージアム」に訪れるとよい。そこの駐車場に駐車し、まずは同ミュージアムを見学して事前知識を得た上、ミュージアムの脇から「星糞峠」に上がり、さらに現地の案内看板に導かれて遺跡範囲に入る。そこは確かに鉱山らしく、往時の採掘跡の窪みが随所に見られて興味深い。細かい黒曜石の破片も時折足元に目につくが、それらは遺跡内ゆえ持ち出し不可。
(この点については厳守のこと! もし、本文を目にして同地に訪れ、禁を犯して黒曜石を持ち出し「お縄」になられても、筆者としては一切責任は負いかねる。) ともあれ斜面を登りつめ、遺跡の最上部に出ると、道はそのすぐ背後から左にトラバース気味に斜上していき、ようやく山稜上の進行になる。さらに行くと、そのうち防火帯みたいに樹木のない薄の原との境を行き、最後に緩い登りをしばしで、南北に広い頂上に達する。そこは全般的に樹林の中だが、展望は南の縁あたりから多少得られる。筆者訪問時には生憎曇天だったが、晴れていれば八ヶ岳方面が良好に望まれそうな一角もある。また北の縁に向けて歩いていってみると、そちらには石祠が1基安置されている。山名標識の類は筆者訪問時点で特に目につかなかったが、石祠脇の碑に「虫倉嶽大神」との文字が刻まれていることにより、そこが確かに「虫倉山」の頂上であることが判ると共に、古くは石器時代の昔から、今に至るまでこの山域が、地域の人々にとっては身近な存在であったことが容易に想像される。
 以上、「黒曜石体験ミュージアム」から頂上までの所要時間は1時間程度みておけばよいだろう。

 ← 長和町の虫倉山方面を望む(頂上手前の「星糞峠」寄り山稜上より)

【緯度】360905 【経度】1381310
(「星糞峠黒曜石原産地遺跡」の東の1,658.8m三角点峰が、本項で紹介する虫倉山です。)