飯縄山(いいづなやま/飯縄山城址)
〜地元の人にもあまり知られぬ寂峰〜標高932m〜
上田市と青木村との境にある山。これもまた信州に多い同名の「イイヅナヤマ」の一つ。ちなみに「飯縄」の名の由来は、本文記述時点で筆者には不明だが、東側山麓の上田市小泉付近等から望むと、ちょうど茶碗に盛った御飯を逆さに伏せたような山容を見せるので、あるいはそれが関係しているのかも知れない。
もっとも、そんな地味な山容ゆえに、一般にはこの山のすぐ西に聳える子檀嶺岳(別掲)に目を惹かれてしまいがちなせいか、地元の人にも案外この山の存在は意識されていないらしく… 実際、筆者が登りに訪れた際に、たまたま出会った地元の人に登山道を尋ねてみても、「イイヅナヤマ? そりゃこのへんじゃないですよ、長野市の方にある山ですよ」と教えられる始末(!)。そんな状況だけに、当然、道らしい道もなく、登るには自分自身の判断に基づき、ルートを決めて行かざるを得ないのが実情だ。また、周辺の状況からして茸山らしく、秋季の訪問は控えた方が無難だろう。
筆者の場合、この山の西側を通過している「飯縄山林道」を車で上田市と青木村との境の峠まで上がり、そこから東へ稜線伝いに頂上を往復するルートを採った。同林道へは北側山麓の上田市上室賀か、又は青木村の管社集落付近のいずれからも入れるが、アプローチ的には後者の方が楽だろう。峠からは、上田市・青木村の境界線上にある稜線を東へ忠実にたどればよく、一応踏跡もあるし、また一定区間おきに現れる境界標が目印になるが、踏跡は登山道というよりは茸道の類らしく、頂稜上に続く最後の登りあたりでは結構薮もきつくて一部踏跡不分明な箇所もあるので注意。頂稜は北西から南東に向けて細長く続いており、南端が最高点で三角点標石がある。筆者の訪問時点では例によって標識一つなく、樹林に囲まれ展望も不良の地味な場所ゆえ、決して万人受けする山と言う訳にはいかないが、その分、寂峰好みの向きには結構楽しめる山といえよう。また、長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』によれば、ここは戦国時代の山城址(飯縄山城址)であるという。もっとも詳細は同書を見る限りでは不明だが、南原公平氏著『信州の城と古戦場』(令文社刊)を参照すれば、この山城、西側山腹にある「黒丸城」の後詰の城であったもののようである。
なお、峠からの往復所要時間は、筆者の場合は1時間半近くを要した。
← 上田市室賀の飯縄山を望む(山麓の上田市小泉付近より)
(明瞭な道はありませんので、後はルートの選択次第です。)