弘法山(こうぼうやま/塩田城址)
 〜独鈷山前衛の歴史性豊かな岩峰〜標高842m〜
 別掲の独鈷山の前衛をなす岩峰。背景の独鈷山が余りに立派なため、通常ほとんど目立たない峰ながら、その実「信州の鎌倉」として知られる上田市塩田平の真言宗の名刹「前山寺」の奥の院にあたるとともに、戦国時代には戦略上重要な位置を占めたという山城(塩田城)の址という、意外な存在価値を有する山。なお山名から判る通り、弘法大師ゆかりの山でもあり、弘法大師がこの山に独鈷を埋めたという伝説が残っている。
 この山に登るには、前山寺に近い塩田城址の登り口からがよい。往時は重要拠点だったという山城址だけあって、登りゆく道の両側には、結構大規模な郭の址がいくつも見られる。しばらく登ると「虎口」址に達するが、そこでは顕著な桝形状の石積みや古井戸址が見られて興味深い。さらに塩田北条氏の二代目・国時の墓所を過ぎると、道はそれまでと一変して次第に急傾斜の岩稜伝いの進行となる。このあたり、冬季には岩の上に落葉が降り敷いた上に雪が積もって滑り易く、意外な悪場となるが、これを突破して頂稜上に飛び出ると、そこからは岩窟の観音像や、半ば朽ちた社殿と石灯篭のある岩上の広場など、短いながらも興味深いプロムナードを経て、ほどなく塩田城一の郭址という頂上に達する。いささか地味かも知れないが、独鈷山を間近に仰ぐ爽快な頂上だ。登り口から頂上までの所要時間はコンディションにもよるが、まあ1時間半程度みておけばよかろう。

 ← 観音石像のある岩窟(弘法山頂上直下にて)

【緯度】362003 【経度】1381143
(前山寺の南南西の842m標高点ピークが、本項で紹介する弘法山です。)