平尾富士(ひらおふじ/平尾富士砦址)
 〜小粒ながら花と展望の好峰〜標高1,156m〜
 とある年の4月中旬。筆者にとって、この山への2度目の訪問時。家族登山に適当そうな山ということで、幼稚園の子供達を同伴しながら、樹林の中の快適な道を歩んで行くと、ふと、気がついた。何と… 周囲の林床は、アズマイチゲの群落ではないか! 筆者はすっかり気分が良くなり、子供の方は適当にあしらっておきながら、夢中になってデジカメのシャッターを切りまくった。
 しかも、頂上に到着すれば、今度は間近に浅間山の雄姿が… 覆屋の中の結構大きい石祠に参拝し、心地好い汗を拭ってベンチに腰掛ける。周囲には春の長閑な陽光があふれ、その下に我が子供達のはしゃぎ声が明るく響く…
 とまあ、こんな山。いささか小粒ながら、良い山だ。まだ訪れていない向きには、是非一度どうぞ。位置的には、上信越自動車道の「佐久平ハイウェイオアシス パラダ」の裏山といえば、ピンとくる向きも多かろう。登山口は「市民の森」広場。頂上まではほんの1時間程度で達する。
 なお、郷土出版社刊『定本 佐久の城』や、宮坂武男氏著『縄張図・断面図・鳥瞰図で見る 信濃の山城と館 第1巻 佐久編』(戎光祥出版刊)によれば、この山、中世の砦址でもあるという。この山の西に位置する「平尾城」の物見砦あるいは詰の城とされるのことで、確かに頂上一帯には、郭や土塁の遺構とおぼしきものがみられる。(注:もっともこの城址、信州の山城址に関するバイブルともいうべき長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』には、この山城址に関しては何ら触れられてはいないが、新人物往来社刊『日本城郭大系 8 長野・山梨』の「平尾城」の項には、一応「物見台の設けられている平尾富士」と記されており、以前からその存在は認知されてはいたものの、従来は「平尾城」の一部として扱われ、独立した山城址として扱われたことはなかったもののようである。)

 ← 平尾富士頂上にて(「平和の礎」の碑)

【緯度】361700 【経度】1383124