荒船山(あらふねやま)
 〜荒海を行く大船の姿〜標高1,423m〜
 長野県佐久市・群馬県下仁田町境の「内山峠」の南にある山。この山を有名にしたのは、何といっても内山峠寄り北面の「艫岩」(ともいわ)という大断崖絶壁の光景だろう。その有様たるや、さながら巨大な生命体たる地球が、台地から下顎を突き出しているかのごとく、異様な迫力をもって見る者に迫り来る。また、溶岩台地特有の平坦かつ広大な頂上部の地形も、先の艫岩共々、信州の山々の中でも特に個性的であり、その山容はしばしば船に例えられる。つまり、大断崖絶壁の部分が舟の「艫」に例えられ、最高点の「京塚」が舳に見立てられたものだというが、筆者などは和船よりむしろ航空母艦の印象の方が強い。それほど頂上台地の平坦さが周囲の山々の中にあって際立って見えるということだが、そんな頂上台地も、いざ実際に訪れてみれば、一面樹林に覆われて存外展望がきかず、かつ結構起伏もあることに意外な感を抱くことだろう。
 登山コースはいくつかあるが、内山峠から上がるコースは、途中艫岩の凄まじい岩壁を見つつ、岩壁の縁から艫岩上部に飛び出るという豪快なルート。対照的に荒船不動から星尾峠経由で上がるコースは、静寂な樹林の中を行く穏やかなルート。どちらのコースを採るにせよ、展望抜群の艫岩上部と最高点の「京塚」の両方は訪れたいもの。とすれば、どちらのコースでも必ず頂上台地を突っ切り往復する形になる。コースタイム的には、いずれも往復3時間程度も見ておけばよかろう。

 ← 荒船山「艫岩」と「京塚」(物見山方面より)

【緯度】361214 【経度】1383813