小式部城山(こしきがじょうやま/小式部城址)
 〜武田氏に対峙した小笠原氏の狼煙台〜標高1,120m〜
 箕輪町・辰野町境にある、ちょっと気になる山名の山。その名から想像つく通り、例によって戦国時代の山城址(小式部城址)の山。頂上直下の案内看板の説明によれば、甲斐の武田氏の侵攻に備えた小笠原氏の狼煙台として利用されたとのこと。また、南原公平氏著『信州の城と古戦場』(令文社刊)によれば、武田氏が伊那侵略後、10余年利用したとある。
 この山で意外なのは、山名の読み方。筆者は当初、当然「コシキブジョウヤマ」と読むものと思ったが、頂上直下の案内看板には「コシキガジョウヤマ」とある。最初誤植かと思ったが、この山の頂上の記念碑を見ると「小式ケ城山」と刻印されており、また『長野縣町村誌 南信篇』の「朝日村」の項にも同様に「小式ケ城址」と記されている。さらに三省堂の『日本山名事典』も、文字は国土地理院の地形図と同じ「小式部城山」ながら、読み方は「コシキガジョウヤマ」としている。これらの事実から想像するに、この山、当初は「小式ケ城山」と表記していたものが、後世何かの拍子に「ケ」が「部」に入れ替わってしまったものらしい。
 この山に登るには、中央自動車道の伊北ICで高速を下り、右折して塩尻方面へ少し走り、最初の交差点を右折して東の北小河内集落へ。そのまま直進し「竹の腰マレットゴルフ場」への細道に入れば、後はそのまま小式部城山方面への林道に導かれる。ただ、この林道、かなり細く傾斜も急で路面もダートゆえ、軽四輪駆動車にでも乗っていない限り、ほどほどの所で妥協して駐車した方が身のためだろう。道はこの林道を忠実にたどるが、途中の分岐は全て左に進むこと。頂上の東直下では山麓の北小河内区で設置した立派な案内看板を見出すので、まず迷う心配はあるまい。ここまでマレットゴルフ場の駐車場から全て歩けば1時間半ほどかかろうが、車の乗り入れ次第で、ある程度ショートカットは可能。案内看板の脇からは、しっかり整備された道を頂上まで5分ほどで達する。頂上には三角点標石の他、記念碑や「樋口區」と彫られた石柱などがあり、往時の土塁とおぼしき盛り上がりもみられる。さらに樹間からは、西から南にかけての山麓がよく俯瞰され、往時の要害ぶりが知れる。

 ← 小式部城山を望む(山麓の小河内区付近より)

【緯度】355643 【経度】1380048