小泉山(こいずみやま)
 〜「体験の森」として整備された憩いの山〜標高1,070m〜
 茅野市豊平あたりの平地上に優しい容姿で小高く盛り上がる、里山の見本のような山。当然、古くから近隣住民の信仰の地であり、毎年6月の夜間に同山中で行われる伝承神事「上古田の火とぼし」の神事は茅野市の無形文化財に指定されている。そんな山だけに、一帯は「小泉山体験の森」として良く整備され、登山道も四方八方から通じており、しかもそれらの道筋には結構見所が多く、頂上からの展望も樹林越しながら比較的良好ときているので、登りの所要時間の割には充実度の高い山域。なお、地元ではコイズミヤマでなく、コズミヤマと呼ばれているようだ。
 そんなわけで、この山に登るには、とにかく山の姿さえ発見できれば、後はその方向に車を走らせさえすれば、適当に多くある登山口のいずれかを見出せようが、筆者は偶然「栗沢口」から訪れた。登り始めてすぐ、諏訪氏一族の栗沢七郎の守り本尊の観音様を祀る「観音平」を通過。合目を示す標柱を目安にしつつ上がっていくと、4合目の手前あたりから少々急登になるが、5合目で一段落する。ここで標識に導かれて脇道に入ると、「権現岩」なる巨大な露岩があり、岩上に権現様と秋葉様の石祠があるので、折角だから拝んでいくとよい。5合目の「天地境稲荷大明神」の石祠を過ぎ、さらに「金剛界大日」碑、「南無妙法蓮華経」碑、「御嶽講」石祠と見つつ進むと、やがて「富士浅間神社」の石祠のある峰に達する。その名の通り、富士山ゆかりの社で、富士山の頂上噴火口に似せて掘った穴の底に安置されているのが面白い。そこから頂上まではすぐに達する。頂上からは前述の通り樹間に八ヶ岳連峰や霧ケ峰などの展望良好。以上、登山口から頂上までは、ゆっくり登っても1時間もかからないだろう。
 なお、宮坂武男氏著『図解 山城探訪 第1集 諏訪資料編』(長野日報社刊)によれば、この山、中世に狼煙台として利用された可能性があるという。確かにこの山、平地の中に独立したよく目立つ峰であり、ここで狼煙を上げれば、さぞかし周辺地域からは良く望めることだろう。またそうなると、上述の今に伝わる「火とぼし」の神事も、何だか狼煙の名残を思わせるものがあって興味深い。

 ← 小泉山を望む(朝倉山より)

【緯度】355958 【経度】1381142