立岩(たついわ)
〜「西上州のドロミテ」と呼ばれる奇観〜標高1,265m〜
西上州あたりには多くの個性的な山々があるが、この立岩ほど日本離れしたような景観も少ないだろう。実際、近在の荒船山や妙義山など、奇抜な山の定番みたいな山々と比べても、なお筆者にはずっとエキゾチックな景観に見えるのだ。山と渓谷社刊『山渓カラー名鑑 日本の山1000』によれば、この立岩、「西上州のドロミテ」などとも言われているというが、なるほど、言い得て妙。確かにこれは、写真などでよく見る、アルプスの景観そのものだ。
そんな景観なれば、一度はこの目で見てみたいもの。いや、一歩進んで登ってみたい。まだ行かれていない向きには、是非一度訪れてみてほしい。見た目は猛烈な岩ながら、妙義山みたいに極端な危険さはない岩なので、鎖はあっても、さして無理なく登れるはずだからだ。
この山の登山口は、群馬県南牧村の「大上」集落。荒船山に通じる「星尾峠」への道の中途にある。そこまでのアプローチの方法はいくつか考えられるが、これまで別に掲載してきた他の西上州の山々と同様、上信越自動車道利用で下仁田ICで下りて西へ、南牧村方面へとひたすら車を走らせるのが最も順当だろう。「勧能」の手前の「羽沢」集落から「星尾」方面への道に入り、登山口まで。そこから「威怒牟幾(いぬむぎ)不動」経由、最高点の「西立岩」頂上まで約2時間半。なお、断崖絶壁の真下にある威怒牟幾不動は、往時はかなり信仰を集めて栄えていたというが、筆者が訪れたときには既に本尊は麓の吉祥寺に下ろされており、社殿は半ば朽ちて倒壊寸前の有様だった。皮肉なことに、この山行中、ここが最も「日本」を感じた場所だったが… 今はどうなっているだろうか?
← 立岩(西上州、大上集落付近より)