太刀岡山(たちおかやま)
〜優れた容姿が登行欲を喚起〜標高1,322m〜
別掲の曲岳や黒富士のすぐ南にある、標高的には平凡ながら極めて立派な山容を有し、登行欲をそそる山。実際、筆者は「昇仙峡ライン」から「観音峠」への道に分かれるあたりで、この山を車中から初めて間近に目にした際、少なからず衝撃を受け、それが何という名の山かも確かめないうちに、その姿を撮影せずにはいられなかった上(注:ここに掲載してある画像がそれ)、思わず当初の目的地をそこに変更しようかと迷ったほど。
もっとも筆者は別掲の羅漢寺山に登った際にも、北西方向に気になる数々の山々を目にしており(注:実はそれが別掲の曲岳や黒富士への訪問の直接の動機になった)、その際には今一つピンとこなかったが、後で当時撮影した画像を確認したら、曲岳や黒富士などの特徴的な山容の面々の中にあって、太刀岡山もまた負けず劣らぬ存在感をもって鎮座していることを、今度こそはっきりと認識した。
それほどの山なればこそ、是非とも登ってみたいもの。登山口までのアプローチは別掲の曲岳や黒富士の場合と同様。「観音峠」への道に入ると、ほどなく下芦沢集落で登山口の標識を見出す。本来ならここから登るべきだろうが、筆者の場合、時間的に厳しい中だったので、平見城集落あたりから林道をたどって北側の峠(「越道峠」)まで車で上がり、そこから頂上をピストンする手を用いた(注:例の曲岳や黒富士に訪れた帰り/その往路で前述の通りこの山の姿を目にして、胸中に湧き上がる登行欲を如何ともしがたく、日没前のわずかな時間の中、無理矢理登ってしまった)。これなら若干急登ながら、峠から最高点経由三角点峰まで1時間半ほどで往復可能だが、林道は細くてダートゆえ、車を傷付けたくない向きには避けた方が無難。地図上の最高点峰にはなぜか標識もなく、樹林に囲まれ展望もないが、その代わり三角点峰の方には石祠が祀られ「山梨百名山」の標柱もあり、展望も良好の素晴らしい場所。一般にはここを太刀岡山の頂上とみなしてよさそうだ。筆者は日没迫る淡く薄赤い陽光の下、その場を立ち去り難い気分と共に、南アルプスや茅ケ岳、羅漢寺山、またその右後方に薄く浮かぶ秀峰富士山の麗姿などを飽かず眺めたものである。
← 太刀岡山(南麓の「昇仙峡ライン」より)