日向山(ひなたやま)
 〜海浜と見紛う鮮やかな白色の砂地〜標高1,660m〜
 この山の名だけ聞くと、いかにも展望の開けた、日向の暖かい頂上を有する山といった情景をイメージする。実際、この山に訪れてみると、頂上付近は極めて明るい。が… この山の場合、明るい理由は単に樹木などの障害がないというのみにとどまらない。
 この山の頂上付近には、「雁ケ原」というザレ場があるのだが、実はこのザレ場こそ、この山が明るいもう一つの要因。というのは、このザレ場、ただのザレ場ではない… 花崗岩の風化した、雪のように鮮やかな白色のザレ場なのだ! この異様な光景を、海の砂浜に例えたのは、私の敬愛する登山家の丸山晴弘氏(ケイシイシイ刊『山旅湯旅ふたたび』P58参照)。まさにこれ以上はない、当を得た例えと思う。青空をバックに白い砂丘が眼前に拡がる様は、全く砂浜海岸の情景そのものだ。
 ちなみに、この山のすぐ南西に聳える甲斐駒ケ岳も、雪かと見紛うほどに鮮やかな白色の花崗岩の露岩を身にまとっており、このあたり一帯の花崗岩が他に比して鮮やかな白色の岩質を有していることは疑いなく、日向山の頂上付近は、それが究極といえるまでに表出している地点なのだろう。そういえば、山麓は有名なサントリーの工場のある白州町(現:北杜市)だが、この町の名も、あるいはこの花崗岩の白さに由来するものだろうか?
 いずれにせよ、そんな山なればこそ、一見の価値は十分ある。まだ行かれてない向きには、是非一度訪れてみてほしい。筆者はこの山に登るのに、中央自動車道を山梨県方向へ南下して小淵沢ICで高速道を下り、白州町(当時)の「日本名水100選」で有名な尾白川渓谷の北側山腹をぬって延びる「尾白川林道」に入った。「錦滝」のあるあたりが登山口になるが、この林道、進むにしたがって細く、かつダートとなるので、登山口まで車で入るのは難しいかも知れない。それでも入れる所まで入って適当な所に駐車して登れば、かなり時間短縮が図れるはずだ。筆者の場合、駐車後しばらく林道を歩き、登山口で林道から離れて北に登り、前述の「雁ケ原」経由頂上まで約1時間半を要した。かの現実離れした景観を堪能した後、三角点を往復したが、こちらは樹林に囲まれて展望が全くない上、最高点にあらず。よって、時間がない向きには割愛してもよいだろう。

 ← 日向山頂上直下(「雁ケ原」上端部)

【緯度】354808 【経度】1381616