大洞山(おおぼらやま)
 〜地元の人々の愛着を感じる優しき山〜標高847m〜
 別掲の井上山の南にある、長野市・須坂市境の山。別掲の井上山の場合と同様、国土地理院の地形図上には標高表示を除いては、山名標示もなければ道の記載もなく、挙句に三角点すらないという、一見不遇の見本のような山。
 しかし、そんな事前の印象も、いざ実際に訪れてみると変わる。この山の登山口は、長野市の山新田、又は須坂市の八町から林道を上がった両市境の「八丁峠」。ここは妙徳山の登山口にもなっており、そちらの方は「のっこしコース」なる登山口を示す標識があるので、すぐ判るだろうが、大洞山には、それとは林道を隔てた正反対の、送電線鉄塔「No.14」の巡視路を兼ねた道を登る。
 一歩踏み出してみて、これは事前の印象と大分違うと気付くだろう。道の整備状態が滅法良いのだ。それゆえ、最初は結構な急登を乗り越えなければならないのだが、足元もしっかりしているし、その割に苦には感じまい。急登を過ぎると、後は平坦な山稜をたどって頂上へ。
 そして、頂上では、意外にも山麓の小学校(須坂市立高甫小学校)の学校登山の記念プレートが、山名標示と共に、いくつも樹木の幹に取り付けられている光景が目に飛び込んできて驚く。これで、道の整備状態が存外良い謎も一気に解消する。そして思うだろう。同じ里山でも、地元の人が愛着を持ち続けている山と、そうでない山とでは、かくも違うものなのだなと… 今や、しばしば猛烈な薮の突破を余儀なくされる里山が多い中、相変わらず地元の人々によって愛され、手を入れられている山は、たとえ無名でも、本当に幸運な山なのだなという感じがする。
 登頂して、そんな感慨をおぼえ、思わず嬉しくなってしまう山だ。八丁峠から頂上まで30〜40分。頂上からの展望は、別掲の井上山同様、樹木が邪魔をして期待したほどには良くないが、この際そんなことには目をつぶろう。身近にこんな山がある地域の人々も、本当に幸せだと思う。

 ← 大洞山を望む(中央のピーク/山麓の長野市若穂大柳付近より)

【緯度】363658 【経度】1381721
(清水集落の東の847mピークが、本項で紹介する大洞山です。)