中尾山(なかおやま)
 〜「裾花凝灰岩」の白い露岩が目立つ山域〜標高590m〜
 長野市街地の西の丘陵中の、別掲の茶臼山の北東約1.5kmに位置する山。一般には付近にある「中尾山温泉」の名で知られており、マイナーな山の割に山名だけは近隣住民の人口に膾炙しているようだが、実際に訪れてみると、意外にも特にはっきりした「頂上」のない妙な山。一帯は「裾花凝灰岩」と呼ばれる特有の白い岩肌が所々露出して急崖をなし、山麓からは結構目立つ奇異な景観を見せているのだが… 地元の人に聞いても、あまりはっきりした答えが返ってこないところからして、つまるところ「中尾山」という呼称は、広く先の白い急崖を有する一帯をさしていうもので、ある特定のピークのみに注目して付けられたものではなさそうなのだ。もっとも我々「山登り」としては、「山」とくれば、どうしても頂点にこだわってしまうので、その場合は、やはり山麓から見える範囲で、地形図上の最も高い地点を一応「頂上」とみなすことになろう。ここに紹介する「頂上」は、あくまでそういう性質のものであることを御了解願いたい。
 で、筆者のみなした「頂上」への道だが… 車でアプローチする場合、駐車場所から「頂上」までは、ほんの10〜15分程度で登れてしまうので、単にそこを訪れるだけでは味気ない。そこで、どうせ行くなら、折角だから山麓の「光林寺」にまず参拝していくとよい。中尾山温泉「松仙閣」への道のすぐ北に同寺への参道があり、それを寺に向けて行くと、右手に目指す中尾山方面の山体が見上げられる。階段を上がった先に、薬医門とその右手に六地蔵があり、薬医門の奥に本堂がある。付近には見事な枝垂桜もあり、花の季節には結構素晴らしい景観を見せてくれるだろう。なお、この参道、今はずいぶん明るい雰囲気だが、実はつい最近まで、樹齢300年以上になるという市指定天然記念物の見事な松並木になっていたのだ。それが松喰い虫被害のため、残念ながら平成12年に天然記念物指定を解除されてしまったという経過がある。参道を行く際、よく見ると今でも所々、松の伐株があるのに気が付く。また、参道入口には当時の天然記念物指定を示す石柱が今も空しく立っている。
 光林寺に参拝したら、いよいよ中尾山に向かおう。中尾山温泉「松仙閣」への道に車を走らせ、同温泉の入口手前で右に折れる細い車道をしばらく上がると、そのうち「花井神社」を左に見て、以前「展望閣」なるホテルがあった所に出る。そのすぐ上に広場があり、筆者は昭和50年代初め頃に小学校の「中尾山遠足」でここに訪れたことがある(注:そこが「中尾山」遠足の最終目的地とされていたこと自体、やはりこの山は特定の「頂上」にこだわるものではないのだろう)。そして、この広場の端から上方を望むと、奥に三角形の白い崖の露出した峰が見えるが、その峰こそ、筆者がこの山の「頂上」とみなしているピークだ。車道はそのピークの直下まで上がっており、車道を上がり切ったへんの峠から、右に分れている小道の先の林檎の果樹園の中を、一番高そうなへんに登りつめれば「頂上」なのだが、生憎果樹園の入口のせいか「立入禁止」の表示があって、入るに入れない。そこで、あえて「頂上」に登るには、峠から車道を150mほど戻ったあたりの左手に別の小道が入っていて、小さい広場状になっている箇所があるので、その付近の道脇に他車の通行の邪魔にならないよう駐車し、後は例の白い崖の頂点に向けて、急斜面の縁伝いに樹林の中を登りつめれば、果樹園を踏み荒らすことなく「頂上」に飛び出すことができる。そこは、すぐ手前まで迫った林檎畑と急崖の縁との間のわずかなスペースに、さながらそこだけ島のごとく熊笹が茂った一角で、筆者の訪問時点では、言うまでもなく特に標識はなかったが、急崖の縁の頂点だけに、長野市街地の俯瞰はじめ展望は比較的良好だし、また周辺で山麓から直接見上げられる範囲としては、そこが最も標高的に高そうであること等から、筆者としては、ここを一応中尾山の「頂上」とみなすこととした次第。なお、以上のような状況の山ゆえ、本文を目にして実際にそこに訪れてみようとされる向きには、
極力収穫時期を避け、かつ果樹園の中に許可なく立ち入って関係者に迷惑をかけることのないよう、重々留意されたい。

 ← 中尾山「頂上」とおぼしき峰(旧「展望閣」の上の広場の縁より)

【緯度】363620 【経度】1380718
(茶臼山の東北東約1.2kmの温泉表示のほぼ真北約700mの果樹園表示のあるあたりです。)