狢郷路山(むじなごうろやま/非常に危険な岩峰のため、通常は登らないでください)
 〜小さいが柱状摂理が見事な岩峰〜標高690m〜
 長野市街地から旧鬼無里村方面へと通じる国道に車を走らせ、やがて百瀬集落にかかった頃、右手上方に、小さいが、しかし遠目にも鮮やかな柱状摂理の岩壁を見せる顕著な岩峰がある。その名も狢郷路山。(注:この山名については、国土地理院の地形図上は表示がないが、地学団体研究会長野支部「長野の大地」編集委員会編『長野の大地 見どころ100選』(ほおずき書房刊)中に「狢郷路山」と明記されているので、それに従った。) 岩登り趣味の者が一目見れば、何やら欲求をそそられそうな峰だろうが、筆者など、あまりに見事な柱状摂理ゆえ、そこは石切場だといい加減長いこと信じ込んでいた位(!)。
 もっとも気にはなるが、余りに険しい岩峰ゆえ、実際にそこを訪問することは長いこと差し控えてきたのだが… 最近、有名な山よりも、知られざる信州の山々を発掘していくことに、この上ない魅力と喜びを感じ始めたのに伴い、やはり狢郷路山にも、参考までに偵察に訪れてみようという気になり… ついに、ある時仕事がひけた後、暗くなるまでの間に思い切って訪れてみた。
 登り口に選択したのは、長野市街地から旧鬼無里村方面へと通じる国道から茂菅集落あたりで右に分れ、県道76号戸隠線を上がっていくと、芋井小中学校への分岐点にある「上ケ屋」バス停の裏手。付近の道脇に駐車し、バス停の裏の薮をかきわけ、露岩もある急斜面を攀じ登っていくと、踏み跡らしきものは一応あり。登ること10分ほどで、露岩の上の危ういピークの上に立てるが、そこは最高点ではなく、そのすぐ先に、さらに数mほど高い岩峰が姿を見せている。そこに登ろうとする場合、そのままリッジ伝いに行くしかなさそうだが、頂点直下のリッジの岩には節理の向きに直角に入った亀裂が多く見られ、今にも崩れ落ちそうなため、現状ではたとえザイルを携行していても、それ以上の登行は不可能だろう。もっとも、それでも頂点付近の岩には、いくつか残置ボルトが見られたが…? 亀裂が入る前に登ったのか、はたまた危険を覚悟で登った勇敢な者がいたのか…? しかし、
現状では決して最高点には登行を試みてはならないと筆者は断言する。手前のピークでも十分展望は良いし、何より顕著な柱状節理の豪快な岩峰に最接近できるのだから、それで我慢すべきだ。
 大体、その手前のピークでさえ、うっかり慣れない者が行って下手な真似でもすれば、たちまち奈落の底に轟沈する危険性を多分にはらんでいるのだ。その意味では、この山は本HPに紹介している山々の中では、特に異質の存在だとお考えいただきたく… 載せておいてこう言うのもなんだが、
この記事を御覧になられて、この峰に訪れ、万一事故を起こされても、筆者としては一切責任を負うことはできない。訪れてみたい向きには、十分注意し、それなりの覚悟の上で登ること。そして、くどいようだが最高点の岩峰には、絶対に登行を試みてはならない。鳳凰山のオベリスクとか金峰山の五丈岩の例のごとく、あまり最高点にこだわらず、例の見事な柱状摂理を間近に存分に観賞だけしたら、慎重に元来た道を戻ること。

 ← 狢郷路山を望む(左端のピークまで登行可能/南西の裾花川畔より)

【緯度】364029 【経度】1380857
(松久保集落のすぐ西の崖の表示のあるあたりが、本項で紹介する狢郷路山です。)