城山(じょうやま/小松尾城址)
 〜川中島合戦当時の狼煙台として機能〜標高750m〜
 別掲の和田之城址と同様、知られざる戦国時代の山城址(小松尾城址)の山。例によって筆者が最近の山城歩きのバイブル的に利用している南原公平氏著『信州の城と古戦場』(令文社刊)にも記載がないが、現地の案内標柱側面の説明を見ると、この周辺は川中島合戦当時の狼煙台として重要な役割を果たした古い城跡で、「うわ堀」「した堀」「馬ならし場」「西小屋」など、城郭に関係する地名が伝えられているとある(注:ちなみに長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』には、「在地小豪族の要害、後、のろし台転用か」とある)。ここもまた別掲の和田之城址と同様に人里近い山城址で、頂上本丸址までの歩行時間は駐車場所から10分程度もあれば十分という手軽さで、見るからに本城クラスではないが、もし案内標柱の説明の通り狼煙台だったとすれば、同様に狼煙台だったとされる別掲の和田之城址と距離的にかなり近いことが、素人目には若干気になるが… まあ別段、この種の拠点は少ないよりは多いに越したことはないということか。
 登山口までのアプローチは、国道19号線の旧大岡村(現:長野市)川口から東に上がる道に入り、3kmほど走って北小松尾集落まで。そのあたりまで行けば、頂上に「住吉大神社」の素朴な社殿が建つ城山の姿は一目瞭然で、かつ登り口には案内標柱があるので見逃すことはあるまい。地元の人の迷惑にならないよう付近に注意して駐車し、後は「住吉大神社」の参道を兼ねた道を、往時の郭の址とおぼしき平地を経て鳥居をくぐり、ほんの10分ほども登れば頂上に達する。あまりに楽すぎて「山」らしくないという向きもあろうが、それは価値観の違いだから仕方ない。どんな山でも必ず何らかの魅力があるもので、ここの場合、山城址かつ庶民の信仰の対象たる神社の山との歴史性はむろんのこと、さらに頂上からの好展望というおまけが付く。神社に参拝してから周囲を見回せば… 前衛の山の向こうに蓮華岳などの北アルプスの連峰、それに普段あまり目につかない、奥裾花の名峰・東山など(!)、とても短時間の山とは思えない。家族連れとか時間的余裕のない場合のにわか訪問にうってつけの山といえよう。

 ← 小松尾城址の城山を望む(犀川左岸の橋木集落付近より)

【緯度】363149 【経度】1375826
(北小松尾集落のすぐ北西、「屏風岩」のすぐ南西の峰が、本項で紹介する小松尾城址です。)