奇妙山(きみょうさん/奇妙山狼煙台址)・
 尼厳山(あまかざりやま/尼厳城址)
 〜岩壁を巡らす「奇妙」な峰々〜標高1,100m(奇妙山)・781m(尼厳山)〜
 本HPの北信エリアのコーナーには、「奇妙山」という名の山が2つ存在して紛らわしいので、便宜上須坂市の奥のそれの見出しの後には「米子」と付して紹介しているが、これら両山に共通する点は、頂上付近にさながら城壁のような岩壁を巡らし、一見近寄りがたいイメージを有していること。然るに、いざ行ってみれば、存外危険もなく、比較的容易に登頂できる点も似ている。こちらに紹介する奇妙山は、長野市松代の東に位置し、山麓には「清滝」の奇観がある。
 この山に登るには、いささかダートながら「林道東豊線」を車で上がって行くのが最短だろう。頂上から南東に延びる尾根の末端の林道脇に駐車し、後は適当に見当をつけて頂上まで踏跡をたどる。途中、ちょっとした岩場もあり、軽いスリルも味わえる変化ある好ルート。駐車してから1時間強で、樹林に囲まれた静かな頂上に達する。
 一見地味な頂上のようながら、『長野市誌』第12巻資料編等によれば、ここは戦国時代の狼煙台址と考えられ、甲斐の武田氏と越後の上杉氏による、一連の川中島の戦いにも関与したものらしいとのこと。ただ、この狼煙台址については山名のごとく「奇妙」な問題があって… 南北朝期にこの山の付近にあったとされる「清滝城」の所在地比定問題にからんで、従前情報が混乱してきている模様なのだ。というのは、長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』では、「清滝城」は奇妙山頂上=奇妙山狼煙台址からやや南東の稜線上の峰上にあるとしており、新人物往来社刊『日本城郭大系 8 長野・山梨』も基本的にこれを踏襲した上、わざわざ「清滝城」を個別の城郭解説にとりあげ掲載している。しかし、上述の『長野市誌』第12巻資料編ではこれらの説は採らず、「清滝城」は狼煙台が設けられる以前の奇妙山頂上か、又は同山の南西山腹にある「清滝観音」あたりにあったのではないかとしている。さらに、2013年に発刊された宮坂武男氏著『縄張図・断面図・鳥瞰図で見る 信濃の山城と館 第2巻 更埴・長野編』(戎光祥出版刊)においても、奇妙山南東の峰上には確かに若干の平場はあるものの、ほとんど地山で堀や土塁の痕跡は認められず(注:上述の『日本城郭大系 8 長野・山梨』の記述では、西にのみ低いながらも土塁跡の一部が認められ、その内法面には石垣が組まれていたとあるが…)、またそこから善光寺平もよく見えないため、城とは言いにくく、奇妙山頂上が「清滝城」であろうとしている。この点、筆者は本文記述時点で奇妙山南東の峰には実際に訪れたことがないので、何とも判断するだけの資格を持ち合わせてはいないが… 以上の諸情報や地形的要素のみから感覚的に想像する限り、奇妙山南東の峰は、仮にそこに当時何らかの施設が設けられていたとしても、奇妙山頂上の狼煙台に附属する補助的物見もしくは隠小屋的なものに過ぎなかったのではないか。
 なお、奇妙山の西には尼厳山という、低山ながら端正な姿の岩峰がある。ものの本によれば、この山へは奇妙山から山稜伝いに歩けるようだが、筆者はまだその道をたどったことはない。しかし、山麓の東条に近い天王山から尾根伝いに、これまた1時間強ほどで登れるし、地理的にも奇妙山に近いので、便宜上同じ項に収録した。頂上直下では進路を岩壁に阻まれ、はたと行き惑うが、落ち着いて右に回り込めば、難なく登頂できる。頂上には例によって戦国時代の山城址(尼厳城址)があるが、樹林に囲まれ展望は今一つ。

 ← 奇妙山を望む(長野市の太郎山より)

【緯度】363408 【経度】1381433
(緯度・経度は奇妙山に合わせてあります。尼厳山はその西に位置しています。)