甲山(かぶとやま/甲山城址)
 〜善光寺平と戸隠方面との連絡を担った山城址か〜標高844m〜
 長野市街地の北西、裾花川に設けられている「裾花ダム」の真南あたりにある山。地形図上は特に目立たない小峰だが、小田切付近を訪れると要所に設置されている「小田切観光協会」の案内地図看板に山名が記されており、かつその頂上部に「旗古城」の標示がある。もっとも、こういう名の城については、南原公平氏著『信州の城と古戦場』(令文社刊)など、筆者常携の参考文献中には全く関連記述がない上、『長野縣町村誌 北信篇』の「繁木村」の項や、また現時点で筆者の手元にある最も詳細な信州の城郭に関する参考文献である長野県教育委員会編『長野県の中世城館跡 分布調査報告書』にすら、その名を見ることができず、当初は全く詳細不明で困惑したが、その後『長野市誌』第12巻資料編の「第3編 城館跡・条里」の一覧表中に、ようやく「甲山城跡」の記事を見出せた。それによれば、「(前略)〜居住機能をもつ城館と考えられる。富士ノ塔砦跡の背後に位置し、善光寺平と戸隠方面との連絡を担う役割があったと推定される。」とある。もっとも、この記事にすら、先の「旗古城」なる記述は見当たらず、かえって同じ小田切の小野平にある「小野平城跡」の項に、同城の別称として「旗古城」の名が見えるので(注:実際、小田切観光協会の案内地図看板にも、小野平近くに「旗古山」の表示がある)、おそらくは案内地図看板の誤記か、さもなければ地元における俗称の類なのであろう。
 この山への登り口は、長野市小田切の千木集落付近にある。長野市街地から旧鬼無里村方面へと向かう国道406号線を行き、「裾花大橋」の手前で左に分れる車道に入って、千木集落付近へと車を走らせ、その名のごとく甲のような山容を目当てに細い「甲山林道」に入る。この林道、そのうち堆積する樹枝などに妨げられて普通の車では進み難くなるが、その手前のやや広いスペースに駐車し、以後は徒歩でわずか林道をたどると、じき右手に赤い目印テープと、それに導かれるように右手の樹林の中に延びていく薄い踏跡が見出されるので、それをたどると難なく頂上に達することができる。駐車場所から頂上までは片道ほんの20分程度。頂上の一角には石祠が1基祀られている他、案外何の標識も説明看板もなく、また地形図上存在するはずの三角点の標石も何故か見当たらないが、周囲には明瞭な切岸や段郭がみられ、往時の名残をとどめている。

 ← 甲山を望む(左下は願生寺/長野市小田切の千木集落付近より)

【緯度】363943 【経度】1380708
(千木集落の東の844.2mの三角点ピークが、本項で紹介する甲山です。)