陣場平山(じんばだいらやま/付:葭雰神社砦跡)
 〜長野市西方の丘陵地帯の盟主〜標高1,258m〜
 長野市の西に広大に横たわる丘陵地帯の中の、いわば盟主的存在といえる山。「陣場」という、どこか勇壮な響きを持つ山名にも心惹かれるものがあるが、長野市の中心市街地あたりからはこの山の姿を望むことができず、南の川中島あたりまで行くと、手前の富士ノ塔山あたりの後方に、はじめて割と平坦な山容を見せてくれる。その一見優しい山容は、さらに後方に聳える虫倉山の険しい山稜と対比されることによって、なお一層優しさが際立って見えるようでもある。
 が… 実際に現地の車道を車で駆け上がっていくと、中腹の斜面はさながら壁のごとく立ちはだかり、遠方から眺めた際の印象とは、あまりに対照的な急峻さに驚かされる。それだけに、この山の中腹あたりから長野市南部方面などの展望は頗る良好で、私の知り合いの中には、ここによくアマチュア無線の移動運用に行くという人もいるほどである。
 かように硬軟両面を見せてくれる山だが… 頂上に登るには、車を利用して「青少年山の家」まで上がれば、徒歩ほんの10分程度で三角点前まで達してしまうという手軽さで、この点遠方から眺めた印象と同様といえる。ただ、頂上周辺は樹林に囲まれていて展望はゼロに等しいので、山らしい開放的な展望を楽しみたいなら、「青少年山の家」付近の標識に従い、三角点方向とは逆に山稜を進んで「葭雰(よしきり)神社」の峰まで往復してみるのがよい。往復距離はほんの1kmほど、せいぜい30〜40分もあれば往復できるし、途中には2箇所ほど長野市街地方面の眺望がきくスポットもある。鳥居をくぐって、ほどなく達する「葭雰神社」は、まるで積石塚古墳のように人工で積み上げられた石室の中に祀られている。長野市で発行した『七二会陣場平トレッキングコース』パンフレットによれば、飯縄山の前宮と伝えられているとのことであり、いかにも山岳信仰らしい一風変わった雰囲気を醸し出しているが、長野市誌第12巻資料編によれば、ここは「葭雰神社砦跡」とされ、社が建立されている場所は曲輪であった可能性が高いとのこと。確かに付近には砦址とおぼしき整形の痕跡がみられて興味深い。(注:ちなみに宮坂武男氏著『縄張図・断面図・鳥瞰図で見る 信濃の山城と館 第2巻 更埴・長野編』(戎光祥出版刊)では、遺構の現状から推定して、緊急時に臨時に使用された物見程度のものだったのではないかとして「葭雰神社物見」と仮称されている。) また、付近にはかつて入会地の権利を守るため争って敗訴し処刑された地元の義民峯村伊兵衛を祀る「白山大明神」「義民顕彰碑」がひっそりとたたずんでいる。
 なお、ここからさらに山稜をたどれば「朝日城址」という別の山城址があったり、さらに別掲の旗古山(小野平城址)も近いなど、標高的に高い割に結構歴史性の豊かな地なので、できれば一日腰をすえて、じっくり見て回りたい山域である。

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【緯度】363848 【経度】1380436
(陣場平山の東にある神社の峰が、葭雰神社砦跡です。)