谷川岳(たにがわだけ/オキの耳トマの耳)
 〜魔の山と呼ばれた美しき双耳峰〜標高1,977m(オキの耳)・1,963m(トマの耳)〜
 この山ほど悪名高き山もそうはなかろう。それも、遭難死者数世界一などという、とんでもない記録ゆえに。この山の「一ノ倉沢」などをはじめとする深い沢筋は、日本有数の岩場を創り出し、そこに挑むクライマーたちによって、遭難事故も含めた数知れぬドラマが繰り広げられてきたことは周知の通り。
 筆者はむろん命は惜しいので、沢登りなどという無理はせず、最も安直に「谷川岳ロープウェイ」を利用して「天神平」まで上がり、そこから天神尾根経由で有名な双耳峰の「トマの耳」と「オキの耳」を往復しただけだが、前述のような先入観を持って行ったせいか、はたまた空がどんより曇り空だったためか、この山行中はどこか気が重いものが終始つきまとった。ことに、オキの耳よりさらに少々先へ進み、件の一ノ倉沢を見下ろしてみた時、そんな気の重さは頂点に達した。何か、見てはいけないエリアを目にしてしまったような気がして、逃げるようにその場を後にしたのを覚えている。
 ただ、そんな暗い事実は脇にどけ、純粋に「山」としてこの山を見る場合、やはり、非常に美しい雰囲気を有する山と言わざるを得ない。ことに、豪雪ゆえに刻まれたものなのか、独特な山襞の繊細さ! 筆者など、自然の造形のひとつの極致ではないかとさえ思う。以前からこの山が、多くの登山者たちを魅了してきた理由がわかるような気がする。
 もっとも、詳論は別の機会に譲るとして、ここでは参考までにアプローチなどを記す。筆者の場合は長野から志賀草津ルート(国道292号)、国道145号経由で群馬県沼田市に至り、そこから国道291号を水上町(現:みなかみ町)まで走り、谷川岳ロープウェイで天神平まで。そこから天神尾根経由、最高点のオキの耳頂上まで約2時間半。なお、晴天時にこのルートを歩いている限りは、危険はまずないので安心の程を。

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【緯度】365013 【経度】1385548