峠山(とうげやま)
 〜旧中山道の難所「鳥居峠」近くの山〜標高1,416m〜
 中山道木曽路の有名な「鳥居峠」の近くにある山。旧街道の街並み保存で有名な奈良井宿の北側の入口あたりから見ると、南に結構顕著な山容を見せており、筆者のごとき「山登り」には思わず興味を惹かれるほどのものであるが、実は頂上に無線施設が多く設置されている関係上、北信エリアに収録した聖山などと同様、ほとんど頂上まで車で上がれてしまうという手軽な山。それゆえ「登山」の対象としては少なからず物足りないが、しかし無線施設の周囲の伐り開きの間からは、中央アルプス方面や、眼下には奈良井ダム湖あたりなどの眺めが良好だし、またすぐ近くには旧中山道時代の面影を今に伝える「子産みの栃」(木祖村天然記念物)、「御嶽山遥拝所」(その名の通り、社殿の裏手から前衛の山の向こうに木曽御嶽山の頂上部を望むことができる)、「丸山公園」(「木曽の栃浮世の人の土産哉」の芭蕉の句碑などが建てられている風流な場所)など見所が多く、時間的に余裕のない場合など、状況によっては結構重宝する山といえる。
 また、この山、宮坂武男氏著『図解 山城探訪 第2集 改訂木曽資料編』(長野日報社刊)によれば、中世の狼煙台であったと推定されるという。実際、この山の脇に通じる「鳥居峠」は、当時何度も戦いの場となっており(注:特に、木曽義昌が甲斐の武田勝頼の軍勢を破った天正10年の戦いは、武田氏滅亡のきっかけとなった戦いとして有名)、上述の「御嶽山遥拝所」の一帯が砦址であるという要害の地であるので、その近くの最高所で眺望もよい峠山の頂上に狼煙台があっても何ら不思議はないのであるが、惜しむらくは頂上には無線施設等が設けられていて、往時の遺構が明瞭ではなく、推定の域を脱し得ないことが残念である。
 さて、この山に訪れるには、「峠」近くの山だけに、北の奈良井側からでも、また南の薮原側からでも林道を車で峠まで上がればよく、そこからさらにややダートな道を頂上直下まで強引に乗り入れることも可能。三角点は「木祖楢川テレビジョン放送局(信越放送・長野放送)」の無線施設の脇にある。なお、前述の「子産みの栃」「御嶽山遥拝所」「丸山公園」は峠からほんの20〜30分で往復できるので、折角だから訪れるとよい。

 ← 峠山を望む(奈良井宿のやや北より)

【緯度】355653 【経度】1374754