大正山(たいしょうざん)
 〜平成14年の山林大火災で一躍有名に〜標高1,060m〜
 有名な浅間温泉の東に、何やら意味あり気に樹林が伐採された明るい山肌を見せる山。一見、里山森林公園の類にも見えるが、実はこの山、平成14年の山林大火災で一躍有名になった山であり、雰囲気が明るいのは、皮肉にもその火災で樹林が焼失したのが原因。実際に現地に訪れてみると、歩を進めるにつれて、足元に多く集積されている黒く炭化した伐採木が、いかにも痛々しい。
 この山への登り口は、特に標識もないが、同山直下をやや美鈴湖寄りに走ったへんに見出せる。道は一応明瞭だが、さすがに公園ではないので訪れる人は少ないとみえ、筆者が訪れた際には、道には所々両側から草が迫っている箇所もあった。もっとも特に登行に支障はなく、ほどなく明るい山稜上に出ると、後は漫歩気分で三角点標石のある頂上に達する。登り口から頂上までの所要時間は片道30分程度と手軽。
 頂上には三角点標石の他、大正4年建立の「今上陛下御即位記念林 大正山」と記した石碑や、また昭和36年の再建という「國家殉職者之霊碑」が立っていることから、地元では以前から登られていたことが知られ、また大正天皇即位を記念して植樹が行われたことも判るが、ただ「大正山」の山名にちなんで大正天皇即位の記念植樹が行われたのか、それとも大正天皇即位の記念植樹が行われたことが山名の由来となったのかは、現時点では筆者には不明。なお、それら石碑とは別に「訓 平成十四年三月廿一日山林大火災」と記した「大正山山頂」の木柱や、「焼け跡に緑を取り戻そう 植林体験」と記した平成15年の木柱があり、例の山林大火災の記憶を生々しく喚起させられる。いずれにせよ、当時の記念林は惜しくも焼失してしまったのであるが… ちなみに本文記述時点では、その火災のおかげで頂上周囲には遮るものがなく、松本市街地の俯瞰をはじめ、戸谷峰など周囲の山々の展望が素晴らしかったが、周辺一帯には既に復旧のための植林がされ、本文記述時点で結構順調に生育しているので、おそらく10〜20年先には、また一帯は樹林に覆われ、展望不良の静かな山に戻ることだろう。

 ← 明るい雰囲気の大正山頂上直下(山林火災で樹林が焼失した山肌)

【緯度】361606 【経度】1380019