城山(じょうやま/雷電城址)・天狗様(てんぐさま/大野神社)
 〜素朴な山名に地元の人の愛着が感じられる〜標高952m(城山)・926m(天狗様)〜
 旧八坂村(現:大町市)にある素朴な山々。いずれも直下まで車道が通じているので、登頂に要する時間はわずかだが、元々山村のイメージ濃い旧八坂村の中にあって、さらに比較的急峻な地形の山懐深く入った所に位置しているせいか、実際訪れてみると結構山深い印象だ。
 城山はもちろん戦国時代の山城址の山で、その名も「雷電城」なるカッコイイ名前の城の址だが、南原公平氏著『信州の城と古戦場』(令文社刊)によれば、この地方の豪族であった仁科氏の臣・小菅氏の城址という以外、特に何の記事もないので、おそらくは甲斐の武田氏の侵略の手がこの地方まで伸びた際、主家の仁科氏と同様、武田の軍門に降ったものだろう。もっとも山城の遺構自体は、小規模ながら比較的良好な状態に保たれていて、頂上に1基祀られた石祠の脇の切岸の縁から下方を見ると、きわめて明瞭な郭や空堀の遺構が見られ、こんな山深い地によくぞ築いたものよと思わず感嘆させられる。
 また、もう一つの「天狗様」の方は、一般には「大野神社」の峰と言った方が通りが良いのだろうが、それにしても小粒ながら容姿秀麗で気になる山ゆえ、付近で山仕事をしていた地元の人に名前を尋ねてみたら、「天狗様。おらほうの氏神様が祀ってあるだ。今でもあるだに」との答え。無論、地形図上に山名表示はなく、また念のため大町市の八坂支所に電話して尋ねてみたが、応対してくれた役場職員の方も返答に窮していたので、いかにも風変わりな山名であることは承知の上、ここでは当面、地元の人の言をそのまま尊重して「天狗様」と紹介することにした次第。それもまた地元の人々の生活に密着した里山らしくて、いいではないかと… 頂上には「大野神社」の素朴な社殿があるが、同神社と天狗との関連については本文記述時点で筆者には残念ながら不詳。引き続き折にふれて由来を調べてみたいと思う。
 これらの山々へのアプローチは、国道19号線を行き、「山清路」から八坂方面への道に入って、小松尾集落付近から細い車道を上がっていけば、そのうち両峰の鞍部にあたる地点(地形図上、城山の南東500mほどの「作の平」集落付近)に達するが、そのあたりが登り口。後は稜線上に続く小道を見出しさえすれば、それぞれ難なく登頂できる。登り口から頂上までの所要時間は、城山の方は30分程度、また天狗様の方は道は一部急だが15〜20分程度と、いずれもきわめて手軽ゆえ、どうせなら近くの金熊温泉「明日香荘」に入浴に訪れるついでにでも立ち寄るとよいだろう。

 ← 「天狗様」の峰を望む(雷電城址の城山寄りの車道上より)

【緯度】362935 【経度】1375536
(緯度・経度は雷電城址に合わせてあります。「天狗様」はその南東、「作の平」付近の926m標高点峰です。)