太郎山(たろうやま)
 〜有名な青木湖のすぐ東だが目立たぬ存在〜標高1,051m〜
 大町市(旧美麻村との境)にある寂峰。有名な青木湖のすぐ東に位置し、一見もっと注目されてもよさそうに思える山なのだが、実際に訪れてみると、頂上に至るまで特に道らしい道もなく、ようやく達した頂上も三角点標石が目につく以外、筆者の訪問時点では標識一つなかったばかりか、樹木が障害となって、すぐ西に大きく連なる北アルプスの眺めも台無しという、不遇の見本のような山。
 もっとも、そんな状況は今に始まったことでもないようで… この手の寂峰調査に威力を発揮する『長野縣町村誌』の中にすら、その名を見出せないことからして、昔から里人の生活からは遠い存在の山だったのだろう。ただ、全く人の気配がないかといえば、必ずしもそうでもなく、途中で昔の馬道の痕跡と思われるような道形や、また人工の削平地と思われる地形が若干目にはつくのだが、確かに人工のものなのかどうか、確証はない。いずれにせよ、少なくとも私の手元にある文献の中では、わずかに三省堂『日本山名事典』の中に簡略な記事を見ることができる程度。
 そんなわけで、この山に登るには、まずもって登り口の適切な選定と、またある程度のルートファインディング能力が必要となる。さらに道形もほとんどない山稜を行くことから、場所によって薮が結構キツい箇所もあるので、訪れるなら夏季は極力避けた方が無難だろう。
 以下、筆者の場合の登行ルートを参考に記す。長野市から白馬村へ向かう「オリンピック道路」を行き、旧美麻村の「青具」の交差点から白馬村寄りに900mほど進んだへんで左に折れる道に入り、関係車両立入禁止の立看板のあるへんまで車で入って、付近のスペースに駐車。以後は徒歩でしばし林道をたどり、峠に出たところで右の斜面に取り付き、獣道のような踏跡をたどりつつ、岩の露出する不安定な急傾斜面を強引に登り切って、後は太郎山から南南東に派生する稜線上を、幾つかのコブを乗り越えながら頂上までたどった。ちなみに筆者が訪問したのは雪の少ない年の3月上旬だったが、標高の割に進行は案外手間取り、駐車場所から頂上までは2時間弱ほどの時間を要した。
 なお、以上のルート中、駐車場所から林道をたどって峠に出た後、筆者の場合は直接右の斜面に取り付いたのだが、それだと前述の通り、きわめて不安定な急傾斜面の突破を余儀なくされ、部分的に危険な箇所もあるので、より安全に登りたい向きには、峠よりさらに200mほど進んだ先で、直接稜線の末端に取り付いて登る方が無難だろう(注:筆者は逆に下山時にそのルートを採った)。その場合、林道は峠付近で終点になっているので、林道の左手の樹林の中にかすかに残る踏跡を頼りに一旦わずかに下り、次いで登り返して稜線の末端に至るのがよい。また、下山時はそのポイントを見逃さないよう多少注意が必要。

 ← 大町市の太郎山方面を望む(南東側の山稜より)

【緯度】363650 【経度】1375209