高遠山(たかとおやま)
 〜木曽らしい静寂な樹林の中の山〜標高1,463m〜
 木曽郡木祖村と塩尻市(旧楢川村)の境、街道の街並み保存で有名な旧中山道奈良井宿のすぐ北にある山。地形図上で見る限りは、三角点もあって結構顕著な山に見えるのだが、いざ現地に行ってみると、標識一つないので登り口すら定かならず、やはり例の奈良井宿や、またその南の「鳥居峠」の有名さの陰にすっかり隠れてしまっている感は否めない。大体、わざわざ奈良井まで来て、旧街道の宿場の散策そっちのけで、これといって特徴もない地味な山にわざわざ登るほどの者自体、きわめて少数派なのであろうが。
 この山に登るには、地形図上では奈良井宿の北から入って鳥居峠方面へと延びる車道の途中から点線道が上がっており、実際ほぼその通りのルートを登行するのだが、前述の通り現地には標識一つないので、事前に地元の人に道を尋ねた上で登る方がよい。また、たとえ読図に自信があっても、この山に限っては、地元の人にあらかじめ登る旨を告げた上で訪れる方が無難。というのは、登り口付近には「入山禁止」の立札が随所にあるからで、断りなしに入山して山菜泥棒か何かと間違われるリスクを犯すよりは、あくまで純然たる登山目的であることを事前に地元の人に知らせておく方が、同じ登るにしても余程気が楽であるはずだからだ。
 登り口は、鳥居峠方面へと延びる車道が舗装でなくなってから、ほどなく左にヘアピンカーブして300〜400mほど進んだへんの右手にあり、すぐ手前の車1台分程度のスペースが目印になる。そのスペースに駐車し、例の「入山禁止」の看板の脇から登り始めると、すぐに山の神様(大山祇神)の祠がある。安全登山を祈念して、さらに200mほど急登すると、道は一旦平坦になって、奈良井宿の西に連なる稜線をまたぐ。(注:この稜線上にも道があり、鳥居峠方面へと行けるようだ。筆者は試みに奈良井宿のほぼ真西の1,360m標高点のやや先までたどってみたが、結構明瞭な道が続いていた。)しばらくしてまた登りになり、さらに200mほど熊笹の刈り開きの道を上がると、やがて三角点のある頂上に着く。この間、少なくとも筆者の訪問時点では、意外と道は良く整備されており、場所によって丈の短い笹が道の上に被さる箇所があった程度で、特に問題はなかったが、上部では熊笹が深くなるので、仮に刈り払い不十分の場合は多少難儀するかも知れない。頂上は熊笹の原の中で、周囲は樹林で展望不良の地味な場所だが、その分いかにも木曽の山らしい、鬱蒼とした樹林の静けさを満喫することができる。なお、頂上手前でわずかに中央アルプス坊主岳方面等の眺めが得られるスポットがあるが、やや傾斜が急で休憩には不向き。
 以上、登り口から頂上までの所要時間は1時間半ほど。

 ← 熊笹の中に続く道(高遠山頂上付近にて)

【緯度】355850 【経度】1374820