秋葉山(あきばさん/中入城址)
 〜山城址の大規模な石垣遺構が見応えあり〜標高1,056m〜
 松本市入山辺にある、戦国時代の山城址(中入城址)の山。別掲の東城山(林大城址)や桐原山(桐原城址)の近くにあり、中入城址はそれらと共に通常「小笠原氏城砦群」等といわれている山城址の中の一つ。別名「山家城」ともいい、現地の看板や信濃史学会編『信州の山城』(信毎書籍出版センター刊)には、この名で紹介されているが、国土地理院の地形図上の表示は「中入城址」であることや、また実際に城址に上がって遺構を確かめてみると、小笠原氏の一連の城砦群の特徴という主郭後背の土塁と深い堀切や主郭周囲の石垣、また甲斐の武田氏の築城法の特徴であるという何条もの竪堀がみられるなど、種々の要素が組み合わさった興味深い城址であることから、ここでは単に山家氏の城というイメージしかわかない「山家城」という呼称よりは、国土地理院の地形図の表示や南原公平氏著『信州の城と古戦場』(令文社刊)の記述のとおり、所在地の地名を冠した「中入城址」を本項の表題としてある。なお、この城址のある「山」の名については、先の『信州の城と古戦場』や『長野縣町村誌 南信篇』の「入山邊村」の項には「秋葉山」とあるが、他の文献によれば、城址の呼称の場合と同様、地名を冠して「中入山」という場合もあるらしい。が… 筆者が試みに現地で地元の人に尋ねてみた限りでは、特に「山」として意識していないらしく明確な答えが返ってこなかったことや、またこの山の頂上付近には実際に「秋葉神社」が祀られていること等から、ここでは当面『長野縣町村誌』等の記述に従い「秋葉山」と紹介しておきたい。
 登るには、山麓の中入集落上手町から整備された道が上がっており、適当に案内標識もあるので心配はない。まずは眼前の斜面を上がって尾根上に出て、さらにその尾根を登りつめると中入城主郭址の直下に出る。この主郭の南〜東面には、きわめて規模の大きい石垣の遺構がみられて興味深い。また主郭址の平地には小笠原氏を祀る祠があり、その背後には前述の通り、小笠原氏の城郭の特徴という後背の土塁と深い空堀がみられる。なお、この主郭のさらに奥にも、現地案内板によれば古いという城郭址があるが、本項でいう「秋葉山」の頂上はこちらの方なので要注意。付近には前述の通り、素朴な「秋葉神社」の社殿がひっそりと祀られており、概ねそのあたりを秋葉山頂上とみなして差し支えないだろうが、厳密な話をすれば、最高点はさらに奥(東)の郭の土塁の上になるので、気になる向きには行って来たらいい。ところで、秋葉神社の前には面白いことに石臼が敷石代わりに敷き詰められているが、何かいわれのあるものだろうか? どなたか、御存知の向きがあったら御教示願いたい。
 以上、登り口から中入城主郭址経由で秋葉山頂上の秋葉神社付近までの所要時間は、途中、しっかり城址の遺構などを見学しつつ歩くなら、片道最低1時間ほどはみておきたい。

 ← 中入城址方面を望む(右側の峰/山麓の中入上手町集落付近より)

【緯度】361324 【経度】1380313