大宮山(おおみややま/三日市場城址)
 〜山城址の遺構は見事だが意外な静けさ〜標高878m〜
 白馬村の三日市場集落の東に小高く盛り上がっている、戦国時代の山城址(三日市場城址)の山。長野市から白馬村に通じる通称「オリンピック道路」が、山間を抜けて白馬村に達するへんのすぐ南にある。「三日市場山」という場合もあるようだが、この山の頂上にある城址を、地元では「大宮城」あるいは「大宮山城」と呼称するのが一般的なようなので… 検討の結果、ここでは当面山名を「大宮山」とし、頂上の城址の呼称は小穴芳実氏編『信濃の山城』(郷土出版社刊)の収録呼称に従って「三日市場城」と表示することとした(注:なお『長野縣町村誌 南信篇』の「神城村」の項には「宮原城址」として掲載されており、文中小文字で「三日市場城とも云」とも記述がある)。
 この山に登るには、三日市場集落にある国指定重要文化財「神明社」境内から尾根伝いに登りつめるのが一番順路だろう。もっとも、筆者の訪問時点では、特に城址を示す標識があったわけでもなく、ただ神明社の鳥居近くの案内看板の記述から、この裏山が城址であることが確認できたのみだったし、また登山道にしても、今ひとつ明瞭なものは見当たらず、結局筆者の場合は、神明社の本殿前の広場から、右手(南)の樹林の中に続く踏跡をたどって尾根上に上がり、後はその尾根の薄い踏跡をたどって頂上の城址に達した次第。案外人が訪れないとみえて、若干薮がちな箇所もあるルートだが、神明社境内から頂上城址までの所要時間は、ほんの20〜30分程度と手軽だし、多少の薮は辛抱しても登ってみる価値はあろう。なぜなら、そこにはきわめて明瞭かつ規模の大きい段郭や空堀が巡らされ、また武田氏の築城の特徴を示すという竪堀の遺構も見出されるなど、山城址としては結構興味深い一大史跡をなしているからだ。もっとも、その割に筆者の訪問時点では、頂上一帯にすら案内看板の類は一つもなく、ただ、本郭址とおぼしき平地の片隅に石祠が1基のみ置かれているに過ぎなかったのが意外。
 なお、参考文献をひもとく限り、この城址には特段の実戦歴はないらしく、甲斐の武田氏の侵攻の際も、城主の沢渡氏は特に抵抗しなかったようである。その意味では、実戦場の城址に訪れるよりは、はるかに気が楽でいい。

 ← 大宮山を望む(山麓の三日市場集落付近より)

【緯度】363835 【経度】1375146
(三日市場集落のすぐ南東の878m標高点の地点が、本項で紹介する大宮山です。)