中山(なかやま/鍬形原烽火台址中山砦址中山二山砦址)・
 弘法山(こうぼうやま/弘法山古墳)
 〜公園化しても捨て難い魅力を有する山域〜標高836m(中山)・650m(弘法山)〜
 松本市街地の東、中山地区に横たわる、素朴な山々。うち中山は今ではマレットゴルフ場や霊園として大規模に開発され、また弘法山も桜の名所として松本市民の憩いの場になっていて、両山ともにほとんど頂上近くまで車で上がれることから、一般には「山」というよりは公園といったイメージが強いが、しかし中山の頂上周辺には素朴な形式の「鍬形神社」や「金鵄伝説石碑群」などがあったり、また宮坂武男氏著『図解 山城探訪 第5集 改訂松塩筑資料編』(長野日報社刊)によれば、このあたりは中世の烽火台(「鍬形原烽火台」)及び「中山砦」の址であるとともに、そこから北に派生する稜線上の774m標高点峰付近には「中山二山砦」の址があるとのこと。(注:774m標高点峰〜弘法山間の稜線上には、旗塚の遺構が多くみられる。) さらにその先(北)の尾根の末端にある弘法山も、その頂上部は「弘法山古墳」という3世紀末の前方後円墳の後円部であるなど… 意外なほどに深い歴史性を有する山域でもあるのだ。そんな両山間をつなぐ遊歩道は、ほんの2km弱、中山頂上三角点のすぐ脇から踏み込んで弘法山に向けて歩けば、所要約30分程度のさして長くもない道ながら、その間の変化には、筆者のような里山ファンには特筆すべきものがあり… 路傍に咲く山吹の鮮やかさ、行くにつれて左右の樹間にひらける松本平の俯瞰や戸谷峰、美ヶ原等の東の山並み、道はさして急でもなく、適度なアップダウンあり、また所によっては崩壊地の縁の若干スリルのある痩せ尾根あり… そして、そのフィナーレは、かなり標高は下がっているとはいえ、松本平や北アルプス連峰の遮るもののない眺めが拡がり、最も開放的な弘法山古墳の円頂! それも、もし時季が合いさえすれば、鮮やかな桜の花びらが舞い散る長閑なプロムナードを楽しむこともできるときていて、なかなかどうして、所用の合間に時間がある時など、気楽に手っ取り早く「山」の雰囲気を味わいたい場合などには、捨て難い魅力をはらんでいる山々なのだ。
 ちなみに筆者の場合は、たまたま家族で外出した帰りの余裕時間を利用して訪れたので、女房に頼み込んで下の弘法山の駐車場に車を回しておいてもらい、中山から弘法山までの一方通行という手をとったが、時間があれば弘法山の駐車場から往復すれば適度な運動になりそうだ。

 ← 桜盛りの弘法山(弘法山古墳の後円部がそのまま頂上になっている)

【緯度】361153 【経度】1375927
(緯度・経度は中山に合わせてあります。弘法山はそこから北に派生する稜線の末端にあります。)