芥子望主山(けしぼうずやま)・鳥居山(とりいやま)・
 城山(じょうやま/犬甘城址)
 〜子供連れなど軽登山に最適な山々〜標高891m(芥子望主山)・750m(鳥居山)・670m(城山)〜
 いずれも梓川の右岸に連なる丘陵状の山々。いずれも標高的には平凡な上、頂上周辺は松本市民などの憩いの場として公園整備されている。それゆえハードな「山登り」からすれば、「山」として少なからず物足りないやも知れぬが、何でも一長一短があるとおり、有名な山とか登りの厳しい山ばかりが山ではない。本来仕事や家庭の環境とか体調、あるいは金銭的・時間的余裕の程度など、その時々の状況に応じ、柔軟に目的地を選択し楽しむことができるのが「山」というものだ。その意味からすれば、ここに紹介する三山など、幼少の子供を同伴する家族連れ軽登山などには、非常に適した山々といえる。
 芥子望主山は、まずその面白い山名に興味を惹かれる。筆者は当初、ごく自然に子供の芥子坊主頭になぞらえた命名かと思ったところ、地形図上の山名表記をよく見ると「坊主」ではなく「望主」となっているので不思議に思った(注:三省堂『日本山名事典』にも同様に記載)。それで『長野縣町村誌 南信篇』の「島内村」の項を参照してみたが、特に参考になる記事が見出せなかったので、後に機会をとらえて直接地元の人に尋ねてみると、案の定「ああ、あれは間違いで、正しくは芥子坊主山なんです」との答え(!)。もっともここでは混乱を避ける意味で、地形図及び『日本山名事典』との整合上、あえて「芥子望主山」のまま記載していることを御了承願いたい。アプローチは安曇野市(旧豊科町)との境に近い国道19号線から「松本トンネル」方面への道に入り、トンネルに入る手前の道をさらに右に入って上がっていけば、後は標識に従って進めば頂上直下の駐車場まで導かれる。結構高い展望台のある頂上までは5分とかからない。一帯は公園として整備されているが、頂上三角点の脇には石地蔵などの石造物が安置され、地元の人々のこの山への愛着心がうかがえる。なお、東に下ると格好の釣り場である「田溝池」の方に下ることができ、軽いハイキングコースになる。
 鳥居山は、芥子望主山のやや南西に位置する「アルプス公園」のすぐ南の山。公園からはやや外れているためか、人気は少ないが、最高点付近は北アルプスの格好の展望台であり、解説板も設置されている。ちなみに付近の「アルプス公園」には、別掲の大町市鷹狩山の山岳博物館にも匹敵する山岳資料の展示施設があるので、そことセットで訪問するのも面白かろう。公園から鳥居山の頂上までは10分ほど。なお、国土地理院の地形図上は最高点のやや南下に743mの三角点があるようだが、そのあたりには無線施設が乱立しており、どこにあるやらよく判らない。
 そして、鳥居山からさらに南に下った所が城山。その名の通り、戦国時代の山城(犬甘城)の址で、天文年間に甲斐の武田氏と対峙した小笠原氏の家老犬甘(いぬかい)氏の居城として、武田の侵攻に最後まで頑強に抵抗し続けたと伝えられる。一帯は「城山公園」として整備されており、筆者は当初、例によって戦後の高度成長期にでも造成された公園の類だろうと想像していたが、実際には意外と歴史が古く、江戸時代末期の天保年間に時の松本城主によって領民に開放されたとのこと。頂上付近には山城址に特有の堀切の痕跡等がみられ、また展望台も設置されていて、松本市街地を一望の下に俯瞰できる。公園だけに、頂上直下まで車で入れてしまうが、それでは山歩きにならないので、上記の鳥居山から遊歩道を「犬飼山御嶽神社」に参拝したりしつつ、ノンビリ歩いてみるのもよいだろう。所要時間は30分程度もあればよい。

 ← 東屋などのある芥子望主山頂上(頂上の展望台上から俯瞰)

【緯度】361634 【経度】1375746
(緯度・経度は芥子望主山に合わせてあります。鳥居山と城山はその南西に位置しています。)