金戸山(かなとこやま/金戸山城址)
 〜渓谷美の地「山清路」の景観の一部をなす〜標高767m〜
 古くから国道19号線沿いの渓谷美の地として知られる「山清路」の景観の一部をなす山。「金戸山」と書いて、何故かカナトコヤマと読む。ちょうど犀川の狭窄部を扼する位置にあるためか、かつて戦国時代には山城がおかれていたほか(金戸山城址)、山中には百体観音が祀られているなど、意外な歴史性と存在感を有する山なのだが… 今や国道19号線の単なるドライブ通過点と化してしまった感のある「山清路」のすぐ脇に、こんな山があるなんて、案外知る人は少ないのではないか。しかし、現地の案内看板にはしっかりその名が記されているし、地元生坂村で設置した標識も随所に設置されていて、マイナーな山の割には安心して歩くことができる。
 この山の登り口は、国道19号線から八坂方面への道に分れて少し行った右手にあり、看板があるので注意していれば見落とすことはないが、付近に駐車スペースがないのがネック。国道19号線寄りの「山清路」の駐車スペースに車を置き、登り口まで歩くのが最善か。コンクリートの階段から登り出し、「薬師堂(山清寺)跡」から素朴な石仏に頭を垂れたりしつつ高度を上げていく。例によって訪問者が少ない山らしく、やや薮がちな箇所もあるが、道形は明瞭なので問題ない。そのうち「御嶽神社跡」と「百体観音」の分岐に出るが、直接頂上を目指すなら右の「百体観音」方面へ、逆に歴史の痕跡を味わいつつノンビリ行くなら左の「御嶽神社跡」へ進むとよい。ちなみに筆者の訪問時は、たまたま事前情報がないまま偶然左へ進んだ。「御嶽神社跡」には、取っ掛かりに石段や礎石が見出されたものの、その上のピークまで登っても特に何も見当たらない。それに何故か説明看板もなかったので「御嶽神社」がなくなった理由は現時点で判然としないが、例によって犀川筋でよく聞く「廃仏毀釈」の結果だろうか?
 「御嶽神社跡」からは、わずか下って薮のきつい往時の郭址らしき平地を突っ切り、頂上の金戸山城址を目指す。登り返してほどなく三角点標石のある頂上へ。最高点は巨大な露岩となっており、露岩に囲まれた平地の中に城址を示す看板と、秋葉様の石灯篭がある。そして、その直下の露岩折り重なる一角には、先刻の案内看板にもあった「百体観音」の石仏群あり。多くの露岩と石仏に囲まれた一角は、さながら天然の大伽藍のごとく一種荘厳な雰囲気をなし、結構見応えがある。今は訪れる人も少ないが、往時はさぞかし参拝者で賑わっていたことであろう。
 以上、登り口から「御嶽神社跡」「金戸山城址」「百体観音」と周回して往復する所要時間は、じっくり見て歩くなら最低2時間はみておきたい。

 ← 金戸山を望む(犀川の上流左岸側より)

【緯度】362811 【経度】1375713