白山(はくさん)
 〜山麓はかつて「信濃日光」と称された〜標高1,387m〜
 波田町にある里山。松本電鉄「新島々」駅のほぼ南に位置する。その名から察しがつく通り、古くは白山信仰と関わりがあった。また山麓にはかつて行基菩薩開基、田村将軍再興といわれる「若沢寺」という寺院があり、最盛期には「信濃日光」とまで称されたというが、残念ながら明治期の廃仏毀釈で廃寺と化してしまった。今は跡地に苔むした石垣や少しばかりの石仏がみられるのみだが、幸いいくつかの建物は移築されて残っており、かろうじて往時の若沢寺の豪壮絢爛さを偲ぶことは可能。それらの中でも、波多神社の脇にある「田村堂」は、白山登山口にも近く、下山後時間があれば是非見学したい。国の重要文化財に指定されており、小型ながら細部が見事な造りで見応え十分。
 で… 本題の白山だが、この山の登り口は先に述べた「若沢寺」跡。松本市側から国道158号線を上高地方面に向けて車を走らせ、波田町に入ると、そのうち左手に前述の「田村堂」への標識があるので、それに従い左折。田村堂前に至ると、今度は付近に若沢寺跡への標識が出てくるので、後はそのまま登り口まで入って道脇に駐車。以後は徒歩で、まずは若沢寺跡を見学。寺の跡地は、さながら山城址の郭や馬場のごとく何段にも及び、往時の壮大さを彷彿させる。かつての情景を想像しつつ、とりあえずは方丈跡から中堂跡、金堂跡、田村堂跡と上がる。
 ここから白山へは、特に標識はないが、田村堂跡の宝筐印塔の台座石の右手に続く小道に入るとよい。途中、いくつか踏み跡が錯綜するので、やや進行に迷う箇所もあるかも知れないが、左寄りにルートをとるとよいだろう。東京電力の送電線鉄塔を過ぎれば、案外広くて判り易い道になり、要所に適当に標識も出てくるので心配ない。そこそこの急登を乗り越え、最後は左から回りこむようにして登頂。頂上は樹林に遮られ展望はないが、小さく素朴な石祠が一つ安置されている長閑で静寂な頂上。三角点標石は石祠の裏手にひっそりと埋設されている。

 ← 白山方面を望む(上波田集落付近より)

【緯度】361037 【経度】1374922