浅川山(あさかわやま)
 〜南安曇の古刹「満願寺」の裏手にあたる山〜標高1,743m〜
 今は安曇野市に合併した旧穂高町の西、北アルプス常念岳の前衛にある山。南安曇の古刹「満願寺」の裏手にあたり、安曇平の南から望むと、結構立派な山容を見せ、筆者のような里山ファンの登行欲をそそるものであるが、その割にはっきりした登山道もなく、ほとんど訪れる人もなさそうな不遇な山。
 この種の山は、ややもすると全山が厚い熊笹の原に覆われてしまい、悪くすると積雪期を除き、おいそれと踏み込むことすら困難になるものだが、この山の場合、幸いにも「林道北沢線」が頂上のすぐ下に食い入っているので、それを利用すれば、道がなくとも何とか熊笹の薮を押し分けて登頂することは可能だ。もっとも、実際に訪れてみると、熊笹が切れた山稜上には意外と明瞭な踏跡らしき痕跡がみられるので、かつては地元の人々によってしばしば登られていたのかも知れない。
 そんなわけで、この山に登るには、現状では特に決まったルートもないので、とにかく「満願寺」の裏手に延びる「林道北沢線」に入ってこの山の直下まで入り、後は適宜登りやすそうな所から頂上を目指すしかないが、筆者の場合、同山のすぐ南約400〜500mのあたりで林道が大きく左カーブしている地点を取付点に選定して登ってみた。いざ踏み込んでみると、予想通りほとんど踏跡はなく、深い熊笹が進路を阻むが、距離的にはさほどでないので、とにかくゆっくり進み続ければ何とかなる。やがて上部で深い笹が切れ、案外気持ちの良い稜線上の進行になるが、ここまで行くと、稜線上には前述の通り、意外にも明瞭な踏跡があるので驚かされる。もっともそれが人のものか、はたまた獣道なのかは不明。ともあれそんな登りを約30分ほどで、原始色濃い頂上に登り着く。三角点標石が笹の下に沈んでいる以外、筆者の訪問時点では例によって山名標識すら見当たらなかった静かな頂上だが、疎林の間には北アルプスの常念岳あたりが間近に望まれ、人気のない山の割には結構明るく豪勢な雰囲気の場所だ。これなら折角林道も間近まで通じているのだし、道を整備すれば結構訪れる人もありそうに思うのだが、どんなものだろうか?
 なお、筆者は以前、初めてこの山に登ってみようと訪れた際、うっかり地形図を忘れたこと等により、この山より北にあって標高も高い1,909.4m三角点峰の方を浅川山と誤認してしまった上、挙句は猛烈な笹薮の中で腰につけていた携帯電話を紛失して、その1,909.4m三角点峰にも登頂できずに終わるという失態を演じたことがある。これから訪れられる向きには、筆者のごとき目に遭わないよう、事前に十分地形図を検討した上で当たられたい(もっとも、このような山に登ってみようと企てるほどの者は、筆者同様の変わり者でない限りは、相当程度の山の玄人であろうから、筆者の心配など、おそらくは杞憂に過ぎないであろうが…)。

 ← 浅川山を望む(「林道北沢線」より)

【緯度】362008 【経度】1374746