山行記録帳(2022)B
〜Yamazaki's Photo Diary 2022,B〜


 【山行・自然観察リスト】
 北アルプス等展望巡礼@〜旧美麻村の権現山  北アルプス等展望巡礼A〜大町市の鷹狩山
 北アルプス等展望巡礼B〜池田町の大峰  北アルプス等展望巡礼C〜長峰山南の烏帽子峰
 北アルプス等展望巡礼D〜長峰山に再訪  北アルプス等展望巡礼E〜今年3度目の聖山
 明るく爽快な冬枯れの山稜〜八風山  一転して地味な樹林の中の頂上〜寄石山
 正体不明の「音」に肝を冷やす〜長者山  2022年最後の山〜妻女山(展望台)


 北アルプス等展望巡礼@〜旧美麻村の権現山
 12/10、この日も、どこか山で軽く運動を… と漠然と思いつつ起床し、空を見ると一転の雲もない快晴。瞬間、私の脳裡に、前週、長峰山で曇りのために北アルプスの展望が全くダメだったことがフラッシュバックした。今日、この天気なら、前週の無念を晴らせるかも知れない!
 そこで、朝食もそこそこに家を飛び出し、一路西へ。そうして車を走らせながら、私は、手っ取り早く北アルプスの眺めが良好に得られそうな場所… として、いくつかの山の名を胸中にピックアップした。その上で、まず目指そうと心に決めたのは、旧美麻村(現大町市)の権現山。確実に展望を得ようとするなら、むしろ同じ大町市の鷹狩山の方がよいかとも思ったが、空模様が変わり易い時季でもあり、わずかな時間の遅れで、また雲にかかられてはたまらないと考え、ここは「賭け」で、我が家から距離的に近い方を優先した次第。
 かくて、人工林の中の薄暗い林道をたどり、無事登り口に至って、早速登り始めたが、薄く雪の積もった道の中を頂上近くに至った所で、私はいささか「誤算」を感じた。どうも、周囲の樹木が、以前訪れた際より、また成長しているのではないかと…
 実際、帰宅後に調べたら、私が前回この山に訪れたのは、何と2004年の4月で、それからはや18年余も経っていたのだ! それだけ時間が経てば、林相に変化が出てきても仕方ない。私の感覚では、ついこの間のことのように思っていたのだが… どうも最近、こんなことが多いようだ。
 それでも、初冬で全く落葉した樹林越しに望まれた、北アルプスの鹿島槍ヶ岳など後立山連峰や白馬三山などの雄姿は十分に迫力があったし、珍しかったのは頚城山群の一角に聳える雨飾山の姿が遠望されたことだった。が、それでもやはり樹林越しでは、多かれ少なかれ鬱陶しい感は否めない。これは、やはりこの後、鷹狩山に行って、仕切り直しをした方がよさそうだ… などと思いつつ、私は元来た道を車まで戻った。







 北アルプス等展望巡礼A〜大町市の鷹狩山
 権現山から下りた私は、直ちに車を鷹狩山に向けて走らせた。この山、「大町山岳博物館」の上の山で、頂上には立派な御神馬が脇に控える「金毘羅神社」があるが、今回の狙いは、頂上の一角にある大展望台の露天最上部に上がり、快晴の下、北アルプスの連嶺の大パノラマを眺めることの一点のみ。
 それにつけても、太陽が天に高く上がれば上がるほど、光線の向きと紫外線の影響なのか、経験的に山々の眺めが微妙に霞んで見えるようになってしまうと思われたので、視界ができるだけクリヤーなうちに頂上に到着したいものだったが、幸い、旧美麻村から鷹狩山までは、さして時間を要さず、どうにか期待通りの時間帯の内に頂上直下の登り口に到着でき、ほっと一息。
 それから、ごく短い距離を、途中、カモシカに出逢ったりしながら歩き、大展望台の長い階段に息を切らせつつ最上部に飛び出て西の方を見やると… いや素晴らしい! 絶景というのは、正にこういう眺めのことをいうのであろう。先刻も権現山で見られた北アルプス後立山連峰や白馬三山はもとより、今度はそれより南に、蓮華岳、餓鬼岳、有明山、燕岳、大天井岳、常念岳… さらには遠く中央アルプスや南アルプスの山々まで…
 私もこの山には何度も訪れてきたが、今回の眺めこそは、間違いなくこれまでの中で最高のものとなった次第。そして、幸運にも今日この時に、この場に来合わせることができた私の感想は… これまで多くの山行記録の中で、何とかの一つ覚えのように用いてきた表現で恐縮ながら、それでもあえて「来てよかった!」ただこの一言に尽きる。
 なお、今日の最上の天候ゆえか、頂上周辺にはそこそこ多くの人の姿が見られたが、私が大展望台の最上部にいる間、なぜか誰一人として上がって来なかった。何故? 私が訪れるより先に上がり終えていたのか、それとも私が下りた後に上がるつもりで待機していたのか、はたまた所詮は人工物とて、当初から上がるつもりがなかったのか…? もし、一番最後の理由だとしたら、何とももったいない話ではあるが…!?







 北アルプス等展望巡礼B〜池田町の大峰
 先の鷹狩山への訪問で、今日の最大の目的は完璧に達せられたので、後は適当に考えればよいだけとなったが… 天候は依然として雲一つないと言っていい快晴、折角こちらに来ていることでもあり、このまま帰ってしまうのももったいない。こうなったら今日は、安曇平を北から南に縦断しつつ、北アルプスの展望を「巡礼」する日にしよう、というわけで、次は池田町の「大峰」を経由していくこととした。
 この山、南北に長い頂上部には車道が通じ、マレットゴルフ場や研修施設などがあって、実際、歩くことなく頂上を通過できてしまう「山」なのだが、この山の中央部辺りには地元のライオンズクラブが寄贈した北アルプスの眺望を解説する石碑が設置され、以前訪れた際は、確かその辺からの眺めが目を瞠るほど抜群だった記憶がある。で… 早速その方向に車を走らせ、件のライオンズクラブの石碑の前に行ってみると… またしても、先に訪れた権現山の場合と同様、雰囲気が以前の記憶とどうも違う。すなわち、例によって樹木が成長し、以前より展望の障害になってしまっているようなのだ。
 それで、これまた帰宅後に調べたら、私がこの山に訪れて、非常にクリヤーで素晴らしい展望に出逢えて感激したのは、2008年の3月だった。権現岳の時より後ではあるが、それでも、はや14年余も前の話であるので、その間に樹木が茂ってしまっても仕方がない。
 それでも、樹間や路傍の土盛りの上から、後立山連峰や蓮華岳、餓鬼岳など、どうにか主要な峰々の画像を撮影した後、さらに頂上部の南端辺りに車を走らせると、今度は飯縄山、黒姫山、妙高山、戸隠連峰の高妻山などが良好に見渡せるポイントを発見。こちらは特に樹木の支障もなく、普通に眺望を楽しめたのに加え、高妻山の左には、何と遠く頚城山群の火打山、焼山、金山などまで姿を見せてくれているのを見出せて驚いた。さらに、そこから少し下った路傍からは、今度は東に遠く浅間山の姿まで…! これまた先の鷹狩山と同様、私がこれまでここに訪れた中で最高の眺めかも知れない… 私は、今日この得難い好天下に、ここに訪れることができた幸運をかみしめつつ、心ゆくまでデジカメのシャッターを切った。







 北アルプス等展望巡礼C〜長峰山南の烏帽子峰
 池田町の大峰経由で南下し、国道19号線に突き当たった所で、私は左折し、一旦は帰宅コースをとった。しかし、時間にはまだ余裕があるし、何だかこのまま帰ってしまうのも、もったいないような気がしてきて… 私は旧明科町で国道19号線と別れて右折、前週に訪れた長峰山への道に入った。もっとも私はその時点では、同じ山に何度も訪れても仕方がないので、今回は長峰山より南にある「光城山」に行ってみようと考えていた。この山も、以前訪れた際に展望が抜群だったから。が… いざ「天平の森」の先に車を走らせると、そこで思わぬ誤算。何と旧明科町に下る道との分岐点から先が、土砂崩落により通行止めとなっていたのだ。うーん、残念…
 私は、やむなくUターンしようとしたが、その際、分岐する道に挟まれた稜線上の小道の脇に立つ標識を見るとはなしに見て、そこに「烏帽子峰」とあるのに気付いた。烏帽子峰? この辺ではそういう名の山は、国土地理院の地形図でも見た記憶がないが… 最近命名された峰だろうか?
 それはともかく、一応「山」、それもまだ私には未訪の峰ゆえ、折角の機会だから、ちょっと上がってみることに。で、通行止め地点の路傍に駐車し、熊鈴付きのストックを出していると、その間に私の横を2人連れのパーティーが通り過ぎ、同峰目指して登っていった。展望台もある長峰山と違い、こちらは寂峰かと思ったので少々意外だったが、その後も数人の登山者とすれ違ったところを見ると、この山、「光城山」と結ぶハイキングコースの中継点として、案外この辺では親しまれている山のようだ。
 かくて、私も先刻の2人の後を追うように、稜線上の道を上がっていくと、ほどなく山名表示板がある狭い頂上に到着したが、そこはさすがに長峰山のようには開けておらず、樹林に囲まれた素朴な里山の頂といった風情で、展望も樹林越しに眺められる範囲に限定されざるを得なかった。それでも私にとっては、小粒ながらも久々の初訪問峰であったので、それなりに今日この山に巡り合えた「縁」を嬉しく感じた次第。







 北アルプス等展望巡礼D〜長峰山に再訪
 烏帽子峰から下りた後、私は、さてこれからどうしようか、おとなしく家に帰るべきか、と思ったが、しかし今日の最後の眺望がいささか不完全燃焼のまま、家に戻ってしまうのは、何だか本日の山巡りの「趣旨」に反するような気がしてきたので… 前週に引き続いての再訪になるが、ここはあえて、確実に良好な展望が得られる長峰山に訪れてみよう、と考えるに至った。
 そこで、早速、車を長峰山直下の駐車場に回し、そこにある大展望台に駆け上がった。と… 今度は期待通り、西に連なる北アルプスの名峰の面々をはじめ、その周辺の山々までもが、当然ながら大変良好に望まれた。その頃になって、ようやく空には多少、薄雲がかかり始めた一角も現れたが、それでも展望そのものには、依然として全く影響はなかった。それで私は、改めて今日の幸運を素直に嬉しく思ったのはもとより、今日私がここに、こうして訪れることができ、素晴らしい情景を見ていられるという事実そのものにも、ちょっとした感慨を覚えた。そう、今、私の眼前に展開されている大パノラマは、いかに天気が良かろうとも、ずくを出してここまで上がって来なければ、決して得ることができない眺望なのだ… と。中でも特に北アルプスの展望は、前週は全くダメだっただけに…
 そしてまた、次のようなことも、ふと感じられてきたのだった… こんな、正に期待通りの情景にあまり連続して接してしまうと、次に訪れる際、ちょっとやそっとの眺めでは満足できなくなってしまうのではないか、と。それはそれで、中毒みたいなもので、少なからず心配ではあるが…







 北アルプス等展望巡礼E〜今年3度目の聖山
 長峰山への訪問後、私は、今度こそ家路につくつもりで、筑北村・聖高原経由で千曲市に向かうルートに車を走らせた。が…
 聖湖畔まで走ってきた時点で、空にはまだ明るさが残っていたので、私の脳裡には、今日の北アルプス等展望巡礼の締めくくりとして、折角だからもう1箇所、訪れてみたいという衝動が、にわかに湧き上がった。そのもう1箇所とは… 言わずと知れた「聖山」。この山、私の膝と腰がまだ相当不調の時期にあっても、容易に訪れられる数少ない場所の一つであったことから、今年は既に2度も訪れてきたところではあるが… これまでの経験上、この山、晴れさえすれば、これまた北アルプスの展望が絶景ときている。そうなると、今日の巡礼のピリオドとして、夕暮れ迫る北アルプスの連嶺を眺めるというのも、また相応しいのではないか、などと瞬間的に理屈をつけると、次の瞬間、私は聖湖前で左折し、聖山方面へと車を走らせていた。
 頂上に通じる車道は、日影には既に薄く雪が積もって凍結していたものの、まだFF車でもスタッドレスタイヤで十分通行可能なレベルだった。そして… 首尾よく明るいうちに到着できた頂上からは、この日最後にして、これまでにない絶妙な色彩の北アルプスの大パノラマが、私の双眸に飛び込んできた。
 鹿島槍ヶ岳をはじめとする後立山連峰など北アルプスの雄大な峰々はもとより、戸隠連峰の高妻山、妙高山、黒姫山、飯綱山、など北信五岳の山々、志賀高原の笠岳や横手山、菅平の四阿山や根子岳、さらには浅間山や、遠く八ヶ岳連峰まで… それらがいずれもが、夕暮れ近い空の中に、ほのかなピンク色を帯びた薄い霞のフィルターの彼方に浮かび上がっている様は、また何ともいえず美しかった。全くもって、にわか思い付きの訪問にしては贅沢過ぎるほどの眺めを前に、私は「山」という趣味を持てたことを、改めてつくづく良かったと思えた次第。







 明るく爽快な冬枯れの山稜〜八風山
 12/16、この日は平日だが、職場の業務が一段落ついたのを機に休暇を取得。無論それは、もし気が向けば、本格的な雪が到来する前に、どこか山でも行って来ようという魂胆からであったが、朝起きて空を見ると小雪が舞っている。近くの山を見る限り、さほど積もっていない様子ではあったが、無理に寒い所に行く必要もないし、今日は比較的積雪が少ない東信地域の山がよかろうと考え… 去る12/3に訪れた物見山の北にある「八風山」を思いつく。この山、上信越自動車道「八風山トンネル」の上の山で、標高的には地味だが一等三角点の山で、頂上からの眺めもそこそこに良かった記憶がある。となれば、思いついたのも何かの縁、早速行ってみようと自宅発。先日の物見山の際と同じ道を行き、難なく登り口には到着したが… 最近、ガソリン代が高いことから、高速料金をケチって下道を走ったために時間を要し、登り始めたのは正午頃になってしまった。
 もっともこの山、頂上までは、さほど時間はかからない。冬枯れて明るい雰囲気の道はよく整備されており、膝と腰に不安を抱える私でも久々に登行に爽快感を覚えるほどで、30分程度の登りの後には、はや頂上に到着。そこからは、妙義山、榛名山、鼻曲山などの眺めが良かったのはもとより、少し頂上の縁に寄ると、雪をまとった浅間山の神々しい姿を意外と良好に望むことができた。確か夏場には、それほど眺めが良かった記憶がないから、季節的に、落葉時期だったのが幸いしたのだろう。
 ともあれ、12月も中旬のこんな時期まで、秋山のごとく雪も全くなく、かくも気楽に歩けるとは幸運の至り。やはり今日は休暇を取得してよかったと思った次第。今年ももう後残りわずかだが、年末までに、あといくつ山に行けるだろうか?







 一転して地味な樹林の中の頂上〜寄石山
 八風山への訪問後、私は、まだ若干時間に余裕があるので、どこかもう1箇所ないか… と思案しているうち、八風山と物見山との間にある「寄石山」を思いつく。この山は、八風山の明るい雰囲気とは一転して、昼なお暗い樹林の中、丈の低い笹原の中のかすかな踏跡をたどる、という、極めて地味な山だが、それはそれで静寂で独特な雰囲気を有しており、私のような寂峰好みの者にとっては捨て難いものだ。ただ… 膝と腰に不安を抱える今の私に、以前と同様に普通に笹原をかき分けて行けるか、という点に一抹の懸念はあったが、去る11/27の保基谷岳で多少、消えかけた踏跡をたどって熊笹の中を進んだ実績からすれば、おそらく心配はないだろうと考え、早速、登り口へ。
 もっとも「登り口」といっても、特に案内標識があるわけでなく、地図のみを頼りに別荘地の中の道を抜けた先から、後は適当に見当をつけて笹の中を進むだけだ。またそんな山だから、いつにもまして動物との不意の遭遇にも注意を要するので、例の熊除け鈴を盛大に鳴らしながら行く(それはまた、「山登り」という意図を明確にすることで、別荘地関係者に不審に思われないようにとの意味合いもこめていた)。心配した膝や腰には幸い負担がかかることもなく、時折、笹の中に隠れた切株に脛をぶつけるのが鬱陶しい点を除いては、至極快調に進行し、無事、頂上に到着。そこは先の八風山とは違い、樹木が障害となって周囲の眺めはほとんど得られず、ただ三角点標石が笹の中にひっそりと埋設されている以外には、朽ちかけた山名表示板が樹幹に取り付けられているだけという、非常に地味な場所。それでも、落葉時期に来たのが幸いしてか、どうにか浅間山の姿くらいは樹林越しに望むことができた。
 頂上には長居せず、しばらくして車に戻り… 帰りは「内山牧場」方面に車を走らせると、牧場近くで荒船山の立派な姿がいきなり眼前に姿を現したので驚いた。去る12/3に物見岩から眺めた姿と大差はなかったが、先刻の頂上がいささか地味過ぎたせいか、印象的には結構強烈であった。







 正体不明の「音」に肝を冷やす〜長者山
 12/17、この日は天気予報では雪とか言っていたが、朝起きると薄日が射していて、午前中くらいは何とかもちそうな様子。そこで、雪が降り出さないうちに、手っ取り早く登って来れそうな、距離的に近くにある手軽な山は… と考えているうち、旧信州新町の南西、左右集落の上の山「長者山」を思いつく。ここなら同じ長野市内で比較的近いし、「長者山公園」前まで車で入れ、そこから徒歩でも片道30分程度も見ておけば頂上に達するはずだ。
 そこで早速自宅を発ち、国道19号を車で南下、信州新町の南の外れ辺りで国道19号から右に折れ、「長者高原」目指して細い林道をぐんぐん上がって、無事、登り口に到着。そこからは徒歩で、当初の見込みどおり30分ほども歩くと、立派な四阿がある頂上に到着。ちなみにこの山、晴れていれば北アルプスの眺めが絶景なのだが… さすがに今日は天候が下り坂のせいか、当初からの予想どおり、北アルプスは雲の彼方で、せいぜい唐松尾根辺りと「大町ダム」辺りの俯瞰、さらに餓鬼岳方面辺りの下部の山稜などが、どうにかそれと判った程度。
 ともあれ、軽く身体を動かす運動にはなったので、今日はそれでよしとして、しばらくしてから下山に移ると… やや下った辺で、何やら私の背後から「ヴォー」と引っ張るような、妙な音が聞こえた。私はギョッとして後を振り返ったが、特に変わった様子はない。しかしさらに下っていくと… また同様の音がすると共に、今度はそれより幾分高音域の音が響いた。距離的にはさほど近くはないが、決して遠くもない。私は、何だ、動物の声か? しかし、鹿の鳴き声はあんなじゃない筈だが…? と首を傾げつつ歩き続けたところ、件の音はその後も低音と高音が1〜2回響いた後、ぴたりと止んだ。
 帰宅後、その音が何なのか、あれこれ探ってみたが、結局よく判らなかった。候補に挙がった有力説は、@近くの集落で飼養するサフォークの鳴き声、A熊が発した威嚇音、B猟犬の唸り声、の3説だが、それぞれ疑問あり。まず@については、集落は現場より相当下だが、その割には背後(頂上側)から結構明瞭に聞こえたこと。またAについては、ヒグマの威嚇音に近い印象だが、ツキノワグマも同様の声を発するとの確かな情報がユーチューブの動画等から得られないこと、さらにBについては、犬にしてはワンワンという声が一度もしなかったこと、である。果たして真相はどうなのか、現時点では何とも判断がつかないが… しかし単独登山というのも、こういうことがあると、やはり危険と隣り合わせだなと、今更ながら実感した次第。
 (追記:実は私、上記山行の翌週の12/19(月)の晩、寝ている間にまた腰痛に襲われ、翌12/20(火)は仕事を休むハメになった。最近、足腰の調子が大分戻ってきたので、里山とはいえ、いつになく毎週のように山に訪れ続けて来れただけに、何とももどかしい思いである。まさか、最近の山行の疲労が蓄積したものとは思いたくないが… 精神だけは若い頃のつもりでも、身体が追いつかなくなってきているのは確かで… 全く、歳はとりたくないものだ。幸い腰痛は、1日安静にしていたら軽快したものの、本文執筆時点の12/24(土)現在、まだ違和感が残っている。とはいえ、ここで怠けたら、また体力が落ちてしまうから、どこか差し障りのなさそうな軽い所でも歩きたかったのだが… この日の未明から遂に長野にも本格的な雪が到来し、山どころではなくなってしまった。このまま今年の山がお終いというのは、何とも残念至極。せめて、年末までにどこかもう1〜2箇所、歩きたいものだが…)







 2022年最後の山〜妻女山(展望台)
 前項の末尾に記した通り、私は12/19(月)の晩から突然の腰痛で、一時は立って歩くのも大儀な状況となってしまったが、痛み止め服用と湿布薬貼付により、翌日1日安静にしていたところ、幸い翌々日の朝には急速に軽快した。然るにその後も違和感は結構残り… ようやく日常生活にほぼ支障がなくなったと思った時には、はや今年もあと2〜3日を残す程度となってしまった。しかし、このまま今年を終えてしまうのも悔しいし、せめて最後に楽な所でももう一箇所、と思ったものの、今年の年末は野暮用が多く、思うように時間が取れない。ただ、12/30は早朝9時頃までなら、わずかだが時間が取れる見込みがついたので、どこか手っ取り早く行って来れる場所… となると、もう思いつくのは1箇所のみ、車で上がれる松代の妻女山。
 それで、朝7時半過ぎに、たまたま同行を希望した次女と一緒に自宅発、8時少し過ぎ頃には、我々ははや妻女山の展望台に立っていた。しかし、残念ながら空は曇り加減で、周囲の山々の眺めは、近隣の里山を除いては、あまり良好とは言えず… 晴れていれば西に望めるはずの北アルプスの峰々はもとより、他の山々がダメな時でも比較的望める確率の高い飯縄山さえもが、今日は残念ながら雲に隠れて姿を見せてくれなかった。
 もっとも、その分、皆神山、陣馬平山、大峰山、三登山、髻山など、私が今年訪れてきた里山の数々や、茶臼山、富士ノ塔山、旭山、葛山など、今年は訪れる機会がなかったが、そのうち「訓練」を兼ねて行ってみたいと思っている山々などが、いつになくフレッシュなイメージとして私の双眸に映った。
 特に、皆神山と、その麓の松代町あたりが、薄霧をまといながら朝の陽光の下に浮かび上がっている様子は、また何ともいえず神々しくて印象的だった。同山は私には例年、新年元旦の恒例として初詣を兼ねて訪れてきた馴染みの場所であるのだが… 来年の元旦は故あって訪れることができない。それだけに、今、年末のこの時にあたり、その姿を殊更に神秘的な雰囲気で望むことができたことは、私にはあたかも(根拠皆無の自己満足的解釈と自覚はしつつも)同山からの「サプライズ」であるかのごとくに感じられ… 少なからず感激した次第。