山行記録帳(2013)A
〜Yamazaki's Photo Diary 2013,A〜


 【山行・自然観察リスト】
 初の撮影に挑戦〜オオルリシジミ観察会  何とも皮肉〜「特別天然記念物」ニホンカモシカ目撃など
 思いがけない遭遇〜シカ目撃など  志賀高原では貴重な静寂エリア〜坊主山など
 国内初の「世界ジオパーク」〜昭和新山と有珠山  長女の「夏休み研究」で訪問〜草津白根山(湯釜)
 歳月の「重み」を実感〜地附山  荘厳な「白鳥神社」の杜〜房総半島の大福山
 得難い懐旧の一時〜谷川岳(天神山)  蝶の観察2013〜アサマシジミなど


 初の撮影に挑戦〜オオルリシジミ観察会
 6/16、たまたま職場の先輩で蝶の専門家の方から、飯山市で開催する「オオルリシジミ観察会」に参加してみないかとの誘いを受けた。
 オオルリシジミといえば、あまりにも有名なレッドデータブック絶滅危惧種の象徴的生物種の一つであり、現在では長野県と熊本県の一部にしか生息しておらず、しかも長野県における純野生の産地としては、飯山市のそれが最後に残った唯一のものであるとのこと(注:東御市及び安曇野市の生息地は、一度野生で絶滅した場所において、累代飼育で残っていた個体を増殖し、再度放蝶して保全を図っているもの)。私としても、是非一度はこれを自身の目で見ておきたく、できれば写真撮影もしたい、ということで、長男・次男を同伴して参加することとした。
 飯山市公民館前の駐車場から観察会主催者のシャトルバスで生息地の直下まで(注:生息地保護のため、場所の詳細は伏せる)、以後は徒歩で発生個体を捜索しながら、まばらに本種食草のクララが生える斜面を案内に従って登った。
 事前に想像したよりも相当上まで登った頃、ようやく最初の個体(♂)を見出し、それを辛抱強く追いかけ、どうにか撮影成功。存外汗をかき、一息つきながら少し下った所で、今度は時折産卵動作をとっている♀に遭遇、時間の許す限り撮影を試みた。
 結果、まがりなりにも念願の本種の自前撮影画像を多くゲットでき、参加した目的は一応果たすことができた。強いて言えば開翅画像について、あまりパッとしたものをゲットできなかったのが心残りではあったが、被写体が被写体だけに、それはいささか贅沢な悩みというものか。
 それにしても、目撃個体数があまりに少ないこと(3〜4個体のみ)が気になった。以前はもっと多く目についたが、近年減少しつつあるとのこと。それでも最近になって保護の体制が徐々に整いつつあるようだが、近い将来、ここもまた絶滅産地となってしまわないよう、各種の対策が奏功することを心より願うばかりである。









 何とも皮肉〜「特別天然記念物」ニホンカモシカ目撃など
 6/30、6月最終日の日曜日。この日は、長野市の東部山地でかつて見られたというアサマシジミを探索すべく自宅発。
 アサマシジミは年に1度、このくらいの時季にしか出現しない蝶であるので、折角の機会、なんとかお目にかかりたいと、しばらくの間、めぼしい所を探し回ってみたが、残念ながら空振り。
 聞く所によると、この地域のアサマシジミの主山地は、林道拡幅工事が行われた際に食草のナンテンハギもろとも潰されてしまったとかで、今では絶滅してしまっているとの説がもっぱら。私はどうにかして、その説を覆したいと、ここ数年探索を試みているのだが、どうも結果は芳しくない。2週間前に、やはり絶滅の危機に瀕しているオオルリシジミの現状を目の当たりにしてきたばかりでもあり、今また突きつけられた厳しい現実に、何ともいえず空しい気分だけが残った一時であったが…
 それでもこの日は全く「収穫」がないわけでもなく、アサマシジミ以外の種類の蝶にはそこそこ出逢えた他、菅平高原にほど近い林道の途中ではニホンカモシカに遭遇、素早く何枚かの画像をゲット。
 まあ、カモシカも最近では街中にまで出現するので、大して珍しいというわけでもないが… それでも依然として「特別天然記念物」であることに変わりはない。それにしても、「特別天然記念物」の方が今やその気になれば比較的易々と目撃できるのに反し、天然記念物でも何でもない虫が次々と姿を消している現実に、私は少なからず皮肉な思いにとらわれるのを禁じ得なかった。







 思いがけない遭遇〜シカ目撃など
 信州は自然の宝庫といって過言でない地ではあるが、ある程度、自然観察にはまり込むと、どうしても長野県内のみにとどまらず、県外に出てみたくなることが出てくる。というのは、県内に生息していない生物にお目にかかるためには、どうしても「越境」して、それが生息していると思われる地に出掛けていくしかないからで… 7/14、私が佐久経由・山梨県へのドライブを家族に持ちかけたのも、正にそんな魂胆からであった。
 今回の最終目的地は、甲斐盆地をゆったり流れる「笛吹川」や「富士川」の河川敷。ここに、長野県内では数十年前に記録されただけで、その後記録のない「シルビアシジミ」が生息していると聞き、是非それにお目にかかってみたいというのが単純な動機。もっとも、相手は最近急速に減少しているという希少種、こちらも当初から「見られれば儲けもの」程度にしか期待していなかったが… 結論から先に言えば、その期待(?)通り、全然見ることができなかった。
 その代わり、いくつか別のものを思いがけず目撃することができたので、折角だから一筆しておきたい。
 その「思いがけない」ものとは… まず一つが「シカ」。たまたま河川の堤防を車で走行中、同乗していた長女が発見したもので、長女の大声により脇に停車し、対岸を見ると、何と本当にそこにシカがいるではないか。背中に白い斑点があるので、まだ子ジカだなと思いながら、取り急ぎデジカメの望遠で数画像を撮影。様子からして、どうも川に水を飲みに来たものらしい。と… 間もなく背後の茂みの中へと消えたので、急いで対岸に渡り、そのあたりに走っていってみたが、残念ながらもう目につくことはなかった。もっとも当然といえば当然。そこは河川沿いとはいえ、結構な市街地のど真ん中。そう易々と発見されていては、ここまでたどり着くことなどできまい。
 それにしても、子ジカが何故、1頭だけで、こんな街中に出て来たのだろう…? と疑問に思いつつ、折角だからその辺りに駐車し、例のシルビアを探索してみようと、しばし堤防べりを歩いたところ、目についたのは残念ながら近縁種のヤマトシジミばかり。したり、今回もダメかと思いつつ、車に引き返し始めた時、オオチャバネセセリに似ているが、ちょっと感じの違うセセリチョウが舞っているのに気付き、花に静止したのにそっと近付いてみると… これが何と、私は長野県内で散々探したものの、これまで発見できていなかったミヤマチャバネセセリ!
 後翅にオオチャバネにはない白斑が1つある、これまで図鑑で見てきた通りの特徴を確認し、思わず胸が高鳴るのを抑えつつ、慎重にデジカメのシャッターを2〜3度切り、どうにか初の撮影画像をゲットすることができ、ほっと一息。捨てる神があれば、拾う神もあるものだなと、偶然の幸運を喜びつつ、帰途についた。
 なお、この日はもう一つ、ドライブの途中、山梨県韮崎市穴山町でたまたま行手に目についた、NHK中継塔のある山に、折角来たのだからと上がってみたところ(注:帰宅後に調べたら、標高643mの峰で、特に地形図上に名称も記されておらず、「山」としてもあまりパッとしなかった)、ここでは、これまた長野ではあまり見られないムラサキシジミに遭遇するなど… 本来の目的は果たせなかったものの、存外「収穫」自体は多い一日であった。






 志賀高原では貴重な静寂エリア〜坊主山など
 7/15、この日は朝から何故だか久々に明るく開放的な山上の雰囲気を楽しみたい気分であり… 家族に声をかけたが、最近、どうも皆、付き合いが悪く、手を挙げてくれたのは長女のみ。仕方なく長女のみを伴い自宅発、まずは飯山市と新潟県の境の「関田峠」に向かい、しばし蝶など自然観察を楽しんだ後、いよいよ「明るく開放的な山上の雰囲気」を求めて志賀高原に足を向けた。
 中野市から「志賀草津ルート」にかかり、のんびり上がって行ったが、「前山リフト」近辺とか横手山周辺は例によって人が多く、どうも気が向かない。そのまま、草津白根山方面に向けて走っていくうち、笹の鮮やかな緑に覆われて、のっぺりした鏡餅の下の方みたいな形の山〜「坊主山」が次第に近づいてきたのを見て… そこに訪れることに決めた。
 「山田峠」の駐車スペースに車を駐め、車道を隔てた反対側の緩い斜面を長女と共にゆっくりと上がり、さして時間も要さぬうちに頂上着。もっとも、特に「頂上」であることを示す標識の類があるわけでもなく、だだっ広い笹とハイマツの繁る中の踏跡を、最高点とおぼしきあたりまで適当にたどっただけであるが…
 それでもこの山、志賀高原にあっては、他のメジャーな山々のように人であふれていることもなく、いつ訪れても静かで、落ち着いた山上の憩いを楽しむことのできる、私にとっては実に貴重なエリアだ。それゆえ、私は昨年もこの山に家族と共に訪れており、今回もまた、ドライブしながら適当に行先を定めるという気楽な選択肢の中、結局は消去法で、またしてもこの山を選択することになった次第。
 もっとも、今回はやや雲が多めの空模様で、周囲に雄大な展望を楽しむという訳にはいかなかったが、それでも昨年の訪問時と違い、今回は純白のシャクナゲの可憐な花が我々を出迎えてくれ… こんな調子だと、私は今後ともこの山には幾度となく訪れることになりそうである。







 国内初の「世界ジオパーク」〜昭和新山と有珠山
 7月下旬から8月上旬にかけて、私と家族は北海道の(主として道央)旅行に出かけた。
 その第一の目的は無論「家族サービス」であったのだが、私にとっては実際それ以上に、昨年、同じ北海道の道南(函館、知内、厚沢部、江差等)に訪れた際、期待したほど多くの種類の蝶(特に北海道特産種)に出逢えなかったことがあり、今年こそは… との思いを抱いての旅であり、その結果、今回は首尾よく、信州では採集禁止種であるコヒオドシや、北海道特産種のエゾシロチョウ、ホソバヒョウモンなど、多くの種類の蝶に出逢うことができたのであるが… 私一人だけが良い思いをしているわけにもいかず、8/3、この日は純然たる「家族サービス」ということで(そうはいっても私も十分楽しめる場所ということで!)、「洞爺湖」付近の観光(「昭和新山」と「有珠山」を含む!)に訪れることにした。
 そこで当日、我々は宿泊していた札幌市内のオートキャンプ場を早朝発、「支笏湖」畔を経て、10時頃に無時「昭和新山」の駐車場に到着。と… そこは北海道の中でも屈指の観光地、しかも土曜日とあって、多くの人々で賑わっていたものの、想像したほどではなかったので一安心、まずは「昭和新山」を間近に見上げて感嘆しばし。観光ガイドブック等の写真では散々見ている景観ながら、現実にこの目にしてみると、まさかこれほどの山が、昭和時代に入ってからできたとは、にわかに信じられないほどの威容だ。
 しばらく付近を散策し、次いで「有珠山ロープウェイ」で有珠山へ。山頂駅の展望台から、青く美しい洞爺湖や、ここからは眼下に意外なほど小さく見下ろせる昭和新山の眺めを楽しんだ後、10分ほど歩き、有珠山中で現在立ち入り可能な最も標高の高い地点(573m)である「有珠山火口原展望台」へ。
 そこからは、西方に昭和52年(1977年)の大噴火で生じ、今も白煙を上げている「銀沼大火口」の眺めが実に雄大。その大噴火当時、私はまだ小学生だったが、当時大騒ぎになったことは今も鮮明に覚えている。然るに今、こうしてその時の噴火の名残を目の当たりにしてみると、これまた、先の昭和新山と同様、これほどの規模の景観がつい30年余り前にできたとは、にわかに信じ難い思い。このあたり一帯は国内初の「世界ジオパーク」に選定されているそうだが、それも至極当然というべきであろう。







 長女の「夏休み研究」で訪問〜草津白根山(湯釜)
 8/10、ちょっとしたきっかけにより、長男・長女と共に、草津白根山(湯釜)に訪問することに。
 そのきっかけとは、話すといささか長くなるのだが… たまたま先日の北海道旅行の際、2012年7月に発売されたアップル社のOSの壁紙にも採用されたという「絶景スポット」で、最近TVでも紹介された美瑛町の「青い池」を長女が見に行きたいと言い出し、そこなら宿泊場所の札幌市から近いからということで、札幌到着の翌日に早速訪問してみた。そこはその名の通り、本当に鮮やかなライトブルーの池で、背景をなす白い枯木との組合せも実に絶妙な、本当の絶景スポットで… その際、私がうっかり長女に、
 「今年の夏休みの宿題は、これにしたらどうだ?」「長野の近くにも、青い色の湖や池があるんだぜ」
 などとけしかけたところ、何とそれが本当になってしまい、結果、「長野の近くの青い色の湖や池」を見せに長女を連れて行かざるを得なくなり… いくつか候補地をピックアップした中の一つが、草津白根山の火口湖「湯釜」だったというわけ。
 で… いざ訪れてみたら、以前は歩けた最短の遊歩道がなぜか通行止めになっていて、左から、地蔵岳寄りの山稜を大きく回りこむようなルートに変更されており、それが結構それなりに急な登りの箇所もあった上、私よりずっと身の軽い長男と長女が、まるで駆けるように上へ上へと登っていってしまったもので、それを追いかけて私もいつになく早足で登っていかざるを得ず、結果、真夏の暑さとも相俟って、予想以上の大汗を搾られるハメとなってしまった。
 それでも、息をはずませながら、どうにか達した展望ポイントからは、ライトブルーに若干ホワイトを混ぜたような、あの独特な色彩の湖面が目に飛び込んできた。その色こそは、実は私にとって「山」らしきものに初めて接した少年時代の思い出にも通じるものでもあるのだが… そんな私の想いなどつゆ知らぬ今回の「主役」である長女は、それを目にして「牛乳みたい」だの「北海道の『青い池』の方がきれい」だのという評を発していた。まあ、確かに「青」という色を基準に考えれば、「湯釜」の水の色は、ある意味薄められ、濁った感じと言わざるを得ないのだろうが、むしろそのおかげで、一口に「青い色の湖や池」といっても、全く同じ色の湖や池ばかりではないこと、またそうした色をしている理由も様々なのだということを、それなりに長女も理解することができたようではあった。






 歳月の「重み」を実感〜地附山
 8/25の午後、私はふと思い立ち、長男と共に長野市内の「地附山」に訪問。
 かつてはロープウェイまでかかっていた一大遊園として知られ、遊園の廃業後はかの有名な「地附山地滑り」で社会に衝撃を与え… と、あまりに激しい変転を経てきたこの山も、地滑りから30年近くを経た現在、地元の人々によって整備され、かつての遊園の施設跡地等を巡る、結構楽しい憩いの里山に生まれ変わったという。
 私にとってこの山は、学生時代(1980年代初めの頃)に山のトレーニングを兼ね、西隣の「大峰山」と共に幾度となく訪れた思い出の地であり(注:その頃には、同山の遊園は既に廃業していた)、その後は2004年に一度家族と共に訪れたことがあるが、その時はこの山の頂上の石祠などは深い薮の中であった。さらにその後、にわかに高まってきた里山見直しの機運とともに、現在、その情景がどのように変化したのか、私は是非一度、参考までに見てきたいと思っていた。
 で… 実際に訪れてみると、道や案内標識は想像以上に整備されており、「地附山前方後円墳」「釣堀池跡地」「旗立岩」… と、見所には事欠かない。そのうち達した頂上も、石祠の周辺の薮は2004年当時の状況がまるで嘘のようにきれいに刈り払われ、しかもその一角は北に展望が開け、飯縄山の眺めが素晴らしい「ヤッホーポイント」となっていた。これなら、普段あまり山になじみのない人々でも、訪れたら相応に満足できるのではないか… と思いつつ、さらに歩を進める先には「モウセンゴケ群生地」「スキー場跡地」… と見所が続き、やがて「ロープウェー山頂駅跡」の廃墟に達したが、それまでの整備の良さとは裏腹に、そこでは2004年の訪問時よりは大分雰囲気が暗くなっているのが気になった。当時に比して周囲の森林化が相当進んだもののようだ。無論、それは自然のなせる業ゆえ、やむを得ないことではあるのだが…
 私は長男と共に、コンクリートの廃墟の上に立って額の汗を拭いつつ、もうあれから9年も経ったのだと歳月の「重み」を感じると共に、ふと自分自身もいつか重ねてきた「歳」のことまでを、はからずも実感させられ… 何やら一種の空虚さにも似た感慨が、その場に時折微かに立つ涼風のごとく、心の中を吹き抜けていった次第。







 荘厳な「白鳥神社」の杜〜房総半島の大福山
 自然観察においては、それにある程度はまり込むと、身近な場所には生息していない生物を見てみたくなるので、先にもどこかに記したとおり、どうしても「越境」せざるを得なくなってくる。9月半ば、私がはるばる千葉県の房総半島半ばまで「遠征」したのも、実にそんな目的によるものであったのだが… 結論から言えば、この日は私にはどうも、こと「蝶」に関しては、まるで運に見放されたような一日に終わった。
 というのは… 地図上の距離的に、房総半島くらいなら、早朝発の日帰りで十分と考えていたところ、いざ行ってみたら、東京都の首都高速道路の渋滞で数時間をロスした上、さらにその後もカーナビゲーションの誤作動や遅作動によって、なかなか首都圏から「脱出」できず… ようやく房総半島の里山にかかれたのは何と午後3時近く(!)、さすがにこれではとても蝶の探索には時間が足りず、翌日は仕事ゆえ時間に限りもあり、やむなく「消化不良」のまま帰途につかざるを得ない状況になってしまったのであるが… せめて何か一つくらい「成果」がないかと、山中の道に車を走らせているうち、路傍に「白鳥神社」なる標示が目についたので、狭いスペースに駐車し、そこに参拝していくことに。
 車道から斜めに小道を上がり、すぐにちょっとした鞍部に出ると、そこに案内看板があって「県指定天然記念物 大福山自然林」とある。しめた、ここは一応「山」なのだと思いつつ、さらに文面を読むと、この山、房総丘陵のほぼ中央に位置し、別名「冑山」、標高290mのこの地が、千葉県市原市で一番高い所であるとのこと(注:帰宅後に地形図を見たら、正確には292m)。そして案内看板の前から一直線に長い石段を登り切った所が「白鳥神社」で、そこがこの山の頂上。神社の社殿は一見簡素で素朴な造りながら、間近に寄って見ると結構見事な彫刻が施されており、周囲の鬱蒼とした「天然記念物」の自然林とも相俟って、いかにも「神の棲家」らしい荘厳な雰囲気を醸し出していた。先刻の路傍の標示が「大福山」でなく、あえて「白鳥神社」と記してある理由が何となくわかる気がして… 偶然かつ短時間の訪問にしては、きわめて印象的な「山」の一時となった次第。






 得難い懐旧の一時〜谷川岳(天神山)
 10/14、三連休最終日の「体育の日」。この日は、たまたま前夜から我が家に泊りに来ていた妻の母親が、「ちょうど紅葉の季節だし、谷川岳のロープウェーでも上がって見たい」と、実に意外な発言をされたのがきっかけで、本当にそこに訪れることになった。
 今回の提案には、山好きの私としては、無論、一も二もなく賛成。谷川岳といえば、私にとっては平成6年の秋に訪れて以来、もう10年近くにもなるが、その間、同山のあの豪雪に刻まれた独特な山襞の様相の、何ともいえぬ繊細で美しいイメージは、私の脳裡では全く色褪せていない。いずれ再訪をと思っていたが、その間、幼少の家族が増えたり、最近の傾向として、山のピークよりも自然観察の方にウェイトが移っていることなどから、なかなか機会がなかった。それだけに、今回の我が妻の母親の提案は、実に得難い機会を私に提供してくれたものであった。
 そこで、当日は早朝、自宅を発ち、前の訪問時と同様、志賀草津ルートを紅葉の山々の景観を眺めながら群馬県側に越え、さらに沼田市経由でみなかみ町へと向かったが、紅葉時期かつ三連休最終日の混雑を計算に入れておらず、谷川岳ロープウェイの乗場に到着できたのは午後2時過ぎとなってしまった。それでもまだ時間はあるので、ロープウェイで「天神平」まで上がり、さらにリフトで天神様の祀られている展望ピーク(昭文社の地形図上「天神山」と表示されている1,502mの峰)まで上がってみた。
 今年の一種異常な気候のゆえか、時季の割には紅葉の色づきは悪く、また天候もやや雲りがちで、間近に望む谷川岳(トマの耳)方面は上部が雲に隠れて見えないなど、今一つスカッとした山上の憩いというわけにはいかなかったが、それでも周囲には、朝日岳、武尊山、赤城山など、私が過去に訪れた、このあたりの主だった山々の一角が望まれて懐かしかった。
 しばし周囲の展望を楽しんでいるうち、やや陽が傾き始めたので時間を確かめると、いつの間にか午後3時を過ぎていた。その時点でも周囲には結構、観光客が多く、このあたりを散策している限りは、谷川岳が悪名高き「遭難死者数世界一」の山であるという感じはまるでなく・・・ 至極気楽な気分のままに、我々はロープウェイで麓まで戻った。







 蝶の観察2013〜アサマシジミなど
 私の蝶の観察も、いつしか一定の年数を重ね、数々の希少種にもそれなりに狙って出逢えるようになってきたが、2013年の場合、数日間にわたり北海道に訪れた機会に、私にとって特に初見となる数種の蝶〜エゾシロチョウ、キタアカシジミ北日本亜種、ウスイロオナガシジミ、ウラジロミドリシジミ、ゴマシジミ(北海道・東北亜種)、ホソバヒョウモン〜にお目にかかれた他、本州では採集禁止のコヒオドシを飽きるほど見られたことが、忘れ難い思い出となった。
 それにしても実際、いる所にはいるもので、ウスイロオナガシジミやウラジロミドリシジミなど、私がこれまで長野県内で散々探し回っても見つけられなかったものが、北海道ではごく普通に見られたのが、きわめて意外で、ある意味「拍子抜け」した次第であったが… 必ずしも出逢えたことイコール画像ゲットには結びつかなかったのも、また厳しい現実ではあった。まあ、目標は簡単に達成できない方が、興味も長く持続するものかもしれないが…
 なお、2013年のいわば「締めくくり」として、環境省レッドデータブックの「第 4次レッドリスト」中「チョウ目」「チョウ類」の掲載種中、私が2013年中に観察できた種を備忘の意味も含めて列挙してみたところ、次のとおりであった。
 「CR」(絶滅危惧IA類) → オオルリシジミ本州亜種,ゴマシジミ本州中部亜種,ヒメヒカゲ本州中部亜種
 「EN」(絶滅危惧IB類) → アカセセリ,アサマシジミ中部低地帯亜種,コヒョウモンモドキ,ヒメシロチョウ,ホシチャバネセセリ,ミヤマシジミ
 「VU」(絶滅危惧II類) → ウラギンスジヒョウモン,オオイチモンジ,キタアカシジミ北日本亜種,ヒョウモンチョウ本州中部亜種
 「NT」(準絶滅危惧) → オオゴマシジミ,オオムラサキ,キマダラモドキ,ギンイチモンジセセリ,ゴマシジミ北海道・東北亜種,スジグロチャバネセセリ北海道・本州・九州亜種,ヒメギフチョウ本州亜種,ヒメシジミ本州・九州亜種,ミヤマモンキチョウ浅間山系亜種
 2014年も引き続き、より多くの希少な蝶たちと出逢いたいものである。